ごあいさつ
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半月板は膝関節の重要なパーツで、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある弾力性豊富な構造物です。半月板は関節に加わる体重の負荷を分散させるクッションの働きと、関節の位置を安定にする働きをして関節表面の軟骨を保護する重要な役割をしています。
半月板が傷つくと運動時に痛みが起こります。また、半月板の機能が損なわれて長期間経過すると、軟骨に負担がかかることで変形性関節症(軟骨のすり減り)が起こる危険性が増えます。そのため半月板損傷が起こった場合、いかに正常な状態に近づくよう修復して機能を回復させるかが重要です。
半月板損傷はスポーツによる膝関節の外傷では最も多いものの一つで、膝をねじった時や関節本来の運動範囲を超えて力が加わると起こりやすく、その場合は関節を支える靭帯も同時に損傷することがあります。もちろん日常的な動作でもストレスが半月板の一点に集中すると損傷が起こります。
また明らかな外傷がなくても半月板が損傷することもあります。その原因として、外側円板状半月板という生まれつきの形の問題(半月板が幅広く分厚いため関節の中でひっかかりやすい)や加齢にともなう半月板の劣化を基盤としていることが考えられます。また、過去に膝関節の靭帯を損傷して関節が不安定な状態で経過すると、半月板に微小なストレスが加わり続けて損傷に至ることもあります。
その他、半月板自体に異常な可動性があり、体重負荷や膝関節の動きに伴って半月板が過剰な動きをすることで痛みや引っかかり感の原因になることもあります。
[ 症状 ]
突然に始まる膝の痛みで、関節を動かす時や体重をかけた時に特に強く痛みを感じます。しゃがむ動作や正座ができなくなるケースもあります。歩行、階段の昇降、椅子からの立ち上がりで痛くなると生活に支障が出てきます。寝返りをうつことでも痛みを感じるようになると良眠できません。損傷によって出血することや、関節内に炎症が起こって水が溜まることもあります。
膝関節の中で物がひっかかるような感覚を感じたり、関節の動きにともなって音が鳴ったり、関節がずれる感覚あるいは関節が噛み合わないような違和感が起こる場合もあります。
[ 診断に必要な検査 ]
典型的な半月板損傷では医師が患者さんの症状を聞き、診察を行っただけで診断に至る場合もあります。しかし、半月板損傷の中でも特殊なケースは半月板損傷に詳しい膝の専門医でなければ診断がつきにくいものもあります。
診察で半月板損傷を疑われた場合、確認のための検査が必要です。一般的には半月板損傷だけではレントゲン上の明らかな変化は現れません。半月板損傷の部位や程度を確認するにはMRI検査が必要です。
[ 治療方法 ]
半月板損傷があっても,そのすべてが手術の対象となるわけではありません。早期に手術が必要なのは、痛みに加えてロッキングという状態(損傷した半月板が関節内にはさまって膝が動かない、あるいはある程度動いても伸ばしきれない曲げきれないという動きの制限がある)になっている場合です。
また、痛みが長く続き、くり返し水が溜まるなどの症状があって、スポーツ活動、日常生活、職業上大きな支障がある場合手術が検討されます。
保存療法(手術以外の治療法)
膝の腫れや痛みが起こったら、患部に負担をかけないようできる範囲で膝の安静を保つことが基本です。強い痛みがある場合は、痛みや炎症を抑える目的で湿布や塗り薬、飲み薬(消炎鎮痛剤)を使います。関節内に多量に水がたまった場合は苦痛がともなうので、針を刺して内容液を取り除きます(関節穿刺)。また、関節の潤滑性を高め、炎症を鎮める効果のある薬剤(ヒアルロン酸など)を関節内に注入する方法もあります。
半月板の血行が良い部位では、自然に治癒する場合もあります。これらの保存療法で症状が徐々に良くなるケースもありますが、完全に治癒しない場合は何らかの違和感や症状が残ります。残った症状に対しては、リハビリや生活指導を受けながらうまく付き合っていくか手術を検討します。医師と相談しながら判断しましょう。
内視鏡(関節鏡)手術の進歩により,現在では比較的小さな傷から半月板損傷の手術治療が行われるようになりました。手術の基本は、損傷した半月板を可能な限り縫い合わせて修復する半月板縫合術です。半月板の損傷した部位が血行の良い部位で、受傷後早い時期であるなどの条件を満たす場合は修復できる見込みが高くなります。十分に修復できれば半月板本来の機能が回復します。
手術方法の工夫や道具の進歩によって本来修復が困難と言われていたケースでも縫合して修復できるようになりつつありますが、必ずしもすべてのケースで修復できるとは限りません。無理に縫合しても治癒しなければ痛みなどの症状が残り、再手術が必要になることもあります。現実的には修復を目指しながら、事前の診断や手術中の判断で縫合を行うか、部分的に切除するか判断することになります。
縫合しても修復できない損傷であれば、半月板の損傷程度の強い部位のみを最小限切除して健常な部分は温存する半月板部分切除術を行い、ひっかかりや痛みなどの症状を緩和させます。
縫合術を行った場合は、手術部位の保護のため一定期間松葉杖を使用します。部分切除では手術直後から歩行が可能です。入院期間は患部の状態が安定し、安全に移動できるようになるまでの期間としています。
半月板損傷の治療は最近の数年間で国内でも縫合術の割合が顕著に増加しており、大きく変化しつつある領域です。また、半月板の損傷形態によっては診断が困難なケースもままあります。例をあげると、異常可動性のある半月板のトラブルは、動作を行わないで静止した状態で撮影するMRIでは検出できないケースが多々あります。当院では膝の症状で困っている患者さんの診断、治療の提案と実践、セカンドオピニオンにも対応いたしますのでお気軽にご相談ください。