ブログ

2021-09-13 12:33:00

dive104

 和尚たちが三方に分かれ、娘であったであろう黒い塊を取り囲んだ。そして、和尚の真言が聞いたことがないものに変わった。両脇に分かれた、円信兄たちが壁に呪符を張り結界を張っていく。徐々に距離を詰め、呪符のついた縄で娘の両腕を縛った。苦しそうにする娘から何かがずれて見える。なんだ、二重に見える片方は若い娘、そしてもう一方は鬼のようだ。苦しむ鬼の隙をついて、円信兄が娘の額に呪符を張った。より一層鬼は苦しみ、激しく暴れだした。先ほどまで二重に見えた娘と鬼がさらに分かれてきた。そして先ほどまでの唸りが二つに分かれ、娘の声ともう一人の女の人の声だということがわかる。泣き叫ぶ娘、そして怒りに震える女の人の叫び声。今までこれが合わさっていたのか?誰だ?この女の人は。その時、後ろでそれを見ていた旦那さんが、悲鳴を上げてへたり込んだ。

「你,你是秀玲。你跟着自己的女儿了吗。不要来这里。快点成佛!」(おまえ、おまえは秀玲。おまえ、自分の娘にとりついたのか。こっちへ来るな。早く成仏しろ!)

それを聞いた和尚が、旦那さんを一瞥し、鬼の方の女の人に話しかける。

「你是这家的夫人吗。」(あんたはこの家の奥方なのか。)

「呜呜・・・呜呜・・・痛苦」(ううう・・・・ううう・・・・く・・苦しい)

なんだ、女の人の方がしゃべった。しかし、なんだこの苦しそうで、恨みのこもった声は。奥さん、この人の奥さんなのか?じゃあ、あの一緒に寺に来た若い女の人は?自分の娘にとりつくって、いったい何があったの。

「痛苦……你…用你喝下的毒药……杀了你……杀了你,那个女人也一起」(苦しい・・・お前・・お前に飲まされた毒で・・・お前を殺してやる…殺してやる、あの女も一緒に・・・)

「你被毒死了吗。然后怀恨……女儿知道那个吗。」(あんたは、毒で殺されたのか。それで恨みを持って・・・娘はそれを知っているのか。)

「妈妈,妈妈,可怜的妈妈。不能允许那个女人作为后妻进这个家。不能原谅。我要杀了那个女人。」(お母さん、お母さん、かわいそうなお母さん。あの女が後妻としてこの家に入るなんて許せない。許せない。あの女、殺してやる。)

「是吗,于是两个想法合为一,变成一个身体的鬼来表现。但是,教唆那个的不是在那后面的你。」(そうか、それで二つの思いが一つになって、一つの体に鬼となって表れたのじゃな。しかし、それをそそのかしたのはその後ろにいるお前じゃな。)

和尚がそう言って右手に持った三鈷杵(さんこしょ・密教の法具であり、これを持つことにより悪霊、悪神を払う)で鬼の方の女の人、奥方の額のあたりを突く。すると奥方が二重になり、娘と別れたように奥方と魔物に分かれていく。先ほどまで鬼のようだった奥方の顔が女の人の顔になった。なんだ、いったい何体が重なっていたんだ。そうか、この魔物がこの二人をそそのかし、恨みを増幅させてこんな風になったのか。人の恨みの力というのは何という力だ。しかしあの魔物がその心の隙間に入り込んでいたとは。和尚たちはそこまで見えていたのか。

dive105に続く・・・

 

Today's Schedule
2024.05.13 Monday