大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2021-08-29 12:23:00

dive100

 あれから、何日経っただろう。僕は毎日水汲み、掃除、読経、功夫(クンフー)、炊事、の繰り返し。青仁に習って小僧になった。はじめのうちはわからないことばかりで、青仁について回るだけだったが、最近はお経もだいぶ暗記してそらで言えるようになってきた。仏さまという存在はなんだかわからないが、毎日ご飯が食べられて、安心して寝られることには感謝している。青仁の歳が近いこともあって、友達が一緒という感じで寂しさもまぎれた。しかし、やはり、夜、一人きりになると思い浮かぶのは姉さんたちのこと。僕が先走ったせいで、あんな目にあわせてしまったのではないかという思いが心の中から吹きあがってくる。それを抑えるために役人たちが悪いんだという蓋を乗せて閉じ込める。毎日、毎日、こんな思いの繰り返し。今更どうにもできないことが故に、失敗という後悔がどんどん大きくなっていく。はじめのうちは覚えることの多さや仕事のことで疲れてすぐに眠ってしまっていたが、日が経つにつれ、体が慣れてくると眠りにつく前にいろいろ考えてしまう。

(ひっひっひ・・お前のせいだ、お前のせいで家族は死んだ。お前が殺したんだ。)と、まるで魔が僕の心を弄ぶようにおそいかかってくる。

(お前が殺したんだ。おまえは人殺しだ。)そんなことはない。僕は悪くない。悪いのはあいつらだ。父さんや母さんを切りつけたあいつらが悪いんだ。

(お前がいなければ姉の力が知られることはなかったんじゃないのか、お前なんかいない方が良いんじゃないか。)うるさい。そんなことはない。お前は誰だ。あっちへ行け!

 毎夜、毎夜、こんなことを繰り返していると睡眠不足になって、修行の最中に居眠りをするようになってしまった。時折青仁が

「行德,你没事吧?睡不着吗。」(行徳、お前大丈夫か?眠れてないのか。)

「没关系。我只是有点困。对不起让你担心了。」(大丈夫だよ。ちょっと眠いだけだよ。心配かけてごめんね。)

「我最初也是那样。很寂寞。但是,过去已经回不去了。现在我是你的家人。和尚也是。那样想的话就不寂寞了。」(僕も最初の頃そうだった。寂しくて。でも、過去はもう戻らないよ。今は僕が君の家族だ。和尚さんも。そう思えば寂しくないよ。)

「谢谢你,青仁。和你是兄弟啊。我会那么想的。」(ありがとう、青仁。お前とは兄弟だな。そう思うようにするよ。)

僕は、そう答えてはいたが、本当は、(勝手に俺を一緒にするんじゃねえ、そのうち僕が救い出して、お前とはおさらばだ。そして、また、本当の家族と一緒に暮らすんだ。)と思っていた。しかし悟られないように、していた。なぜなら、僕は此処に居なければいけない理由が出来てしまった。昨日の夜、ちょっと不思議なものを見てしまったからだ。僕は昨日も魔の言葉に眠れずにいて目がさえてしまい、おしっこに行こうと厠へ行った。僕たちの寝ているところから近い厠は先輩僧たちの部屋の傍で、ごそごそすると何か言われそうだったので、もう一つの和尚さんの部屋の近くの厠へ行った。用を足して帰ろうとしたが、なぜか気になって和尚さんの部屋を見ると、ぼんやり明かりがついているようだった。ん、おかしいなこんな夜中にと思い、ちょっと扉の隙間から覗いてみた。すると和尚さんが片手に書物を持ちながらぶつぶつ言っている。なんだ、とよく見てみると、反対の掌の上にあの時姉さんが見せたような光の球が渦を巻いていた。僕はびっくりしたが、気づかれてはいけないと思い、口をふさいでじっと見ていた。見ていると球が凝縮して光が強くなった。そして、パッと消え、和尚さんは大きく息を吐いた。僕は見つかる前に寝床に帰った。そうか和尚さんたちは僕の姉さんのこと聞いても、そんなに驚かなかったのはこういう事か。和尚さんも術を使えるのか。でもなんか姉さんとは違うような気がした。本を片手にやっていたし、何か自然の力を借りているようにも見えなかった。もしかしたら、修行をしていれば僕にもあの術が使える様になるのかもしれない。どんな術なのかはわからないが、もしかしたら、姉さんたちを助けられるかもしれない。そして術の力でああいう役人たちやそれに加担する悪い奴を一人残らず始末してやるんだ。僕はそう決心した。その夜からだ、なぜだか魔の声は聞こえなくなっていた。

dive101に続く・・・

 

 

 

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