大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive95
雷の閃光を浴びて輝く青龍刀が、とっさに防ごうとした僕の左腕を切りつけた。暗闇を閃光の残像が円を描くように目に残る。腕の傷は浅く、それほどの出血はなかった。興奮状態のせいか痛みをあまり感じない。何が起きているか理解するのがやっとで、わかったとたんに足がすくんでしまって動けない。大粒の雨が激しく降ってきた。風も激しくなり、いつの間にかずぶ濡れになってきた。恐怖で固まった口を、それでも懸命に開き助けを呼んだ。
「师父~~!请帮帮我。」(師範~~!助けてー)
こんな声じゃとても師範たちには聞こえない。
「又是你啊,小僧。如果那么想死的话就杀了你。」(またお前か、小僧。そんなに死にたければ殺してやる。)
役人がそう言ったが早いか二撃目が振り下ろされる。後ろから父さんが僕の帯を引っ張り、何も見えないが目の前を何かが通る音が聞こえた。雷の音が近くなってきた。ますます雨風が激しくなってきた。
「行德!退下。师傅,帮帮我!」(行徳!下がれ。師範、助けてくれ!)
父さんにはさっきの僕叫びが聞こえていたようだ。師範が一緒に来ていることを察知し、助けを呼んだ。役人には父さんたちが見えていなかったようで、父さんの声に枷をはずされたことに気づいた。その声に余計に腹が立ったのか
「是为了让女儿听我的命令的人质、全部杀了你!」(娘に私の命令を聞かせるための人質だったのだが、みんなまとめて殺してくれるわ)
向こうも視界が悪いのか、やたらに切りかかって来る。僕たちはその辺にある縄や板、木箱などを投げつけては後退した。その声に気づいた師範が
「行德!现在就去!」(行徳!今行く!)
その声に反応して役人が振り向いた。今だ。僕はここぞとばかりに役人に鉄山靠(てつざんこう・八極拳の技で背中で体当たりをいう)をくらわしてやった。やったか?いや、浅い、ならばこれだ。足場の悪い船の上、僕の足を役人の足に添えて内から押す、これは八極拳の梱鎖歩(こんさほ)という技だ。よろけたところに最後は震脚、裡門頂肘(りもんちょうちゅう)の流れで・・・
あれ?崩れない?僕の軽い体重では梱鎖歩(こんさほ)がきかないのか?まずい。稲妻がまた役人の青龍刀を照らし、役人の顔まで
恐ろしく不気味に見える。上段に構えられた刀が振り下ろされる前に後ろへ飛ばなきゃ。だめだ、役人が逆に足を絡めてきて、逃げられない。もう駄目だ。
ドン。大きな重たいものが僕にのしかかる。なんだどうなったんだ。なんだ?えっ!重く大きくのしかかっていたのは父さんだった。父さんが役人と僕の間に割って入ったんだ。あまりに接近戦だったため刀を振り下ろそうにも刀のツカが父さんの背中に当たって振り下ろせなかった。
「嘿!碍事!老头儿!」(ええい!邪魔だ!じじい!)
そう言って僕ごと父さんを蹴り飛ばした。父さんはもんどりうってそのまま欄干に打ち付けられ、僕は仰向けになって無防備な状態だ。役人が片足で僕の腕を踏みながら、もう一度刀を振り上げ、にやりと笑った。動けない。
「真遗憾啊。小拳士。如果你不来,大家就不会死了。」(残念だったな。小さな拳士。お前が来なけりゃみんな死なずに済んだのにな。)
次の瞬間!なぜか皆の動きがゆっくり見え始めた。刀が振り下ろされる。
「行徳!」
今度は母さんが飛び込んできた。僕の上に母さんが覆いかぶさる。少しずつ刀が降りてくる。だめだ母さん。早く逃げなきゃ。その時、ドン!と大きな振動がした。これは!震脚の音だ!
「裡門頂肘(りもんちょうちゅう)!」
師範の声だ。
役人がどさっと倒れた。助かった。僕はほっとして力が抜けた。
「妈妈!妈妈!・・」(母さん!母さん!・・」
姉さんのさけび声がして僕は震えた。母さん切られてるの?僕はすぐに起き上がり母さんの様子を見ようと雨でぬれた顔を手で拭った。あれ、拭った手を見ると血まみれだった。母さんが・・・
dive96に続く・・・

