大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2021-08-16 21:03:00

dive94

 山の天気は変わりやすく、少し暗くなって雲が出てきた。遠くから雷鳴もひびいて聞こえてくる。青嵐が見張っていた街道を荷馬車がやってきた。それも三両も。その後を人を乗せた馬車がついてきた。役人たちがのっているようだ。青嵐が急いで戻ってきた。荷上場に馬車が入っていき、人夫たちが集まってきた。荷物を積み替えるようだ。木箱には、おそらくさっき師範が言っていたような陶器が入っているのだろう。重そうな箱を運んでいる。ちょうど影になりそうな、三両の荷馬車の奥に移動し、その時を待った。師範は人夫に成りすまして船に乗り込もうと言った。大きな船だったので隠れられそうだと。

 「喂,天气变差了快点儿啊!」(おい、天気が悪くなってきたから急げよ!)

 人夫の親方が大声で皆に言う。僕たちも木箱を持って船に乗り込む。何とか三人とも乗り込めた。荷物を載せ終わると、今度は人がのって来る。荷物の陰に隠れてみていると、役人が姉さんたちを連れて乗り込んできた。姉さんたちは両手を縛られ、三人繋がれていた。今すぐ行って助けたいところだが、船出してから、夜を待って襲撃する作戦を立てていた。いきり立つ僕を師範が抑えている。

すぐに船が出るものだと思っていたが結局、他の乗客を待って出たのは昼過ぎになってしまった。その間に天気はさらに悪化し黒雲に覆われてしまっていた。昼過ぎぐらいだというのにあたりは暗くなってきた。出港して少しすると川が荒れてきた。どうも上流でかなり雨が降っていたらしい。濁流に近くなってきた。船も揺れが激しくなってきて足元もおぼつかない。このままだと夜を待ってなんて言ってられなくなってきた。そうこうしてる間に雷鳴もとどろき、あちこちに閃光が走る。

「现在不去的话就无法挽回了。师父!」(もう、今行かないと取り返せなくなる。師範!)

「是啊,现在就袭击在中途的港口下车吧。」(そうだな、今襲撃して途中の港で降りよう。)

そういって、役人たちが休んでいる場所に行こうとした時、カッと稲妻が光って周りを照らし、一瞬にして皆を凍り付かせた。飛び出したその場所に黒装束たちも出てきていたのだ。飛び出したぼくたちも師範の後ろでドギマギしていた。あちらもこんなところで鉢合わせするとは思っていなかったのだろう、後ろにいる黒装束の手下の何人かはこちらを認識していないようだ。

「没办法。请开始战斗。」(仕方ない。やるぞ。)

 そう言って師範が突撃した。さすが八極拳の師範。一撃必殺の踏み込み。相手に猶予を与えない動き、よどみなく次の攻撃に移る瞬間に、相手の攻撃を払いのけ、体勢を崩し、隙を作りその守りの空いたところに的確に打ち込む。拳法とはこういう一連の動きのことなのだと、確認できる。初めて見る実践に興奮して見とれてしまう。師範と敵の動きを見ていると、攻撃してくる瞬間こそバランスを崩すのだ。構えていた時から打つ瞬間までの間、相手の方へ、前のめりに重心が移る。その不安定な、打ち込みの時の踏み込みの軸を少し崩してやると、重心を戻そうとする、そこに隙ができる。そこを打つ。敵が攻撃を当てようとする場所を少しずらしてやるだけで威力が半減し、次の攻撃に移ることができる。ああ、なんて動きだ。流れる、水の流れのようだ。美しさすら感じる。

「行德!快点儿!」(行徳!早くいけ!)

ハッ!として姉さんたちを探しに行った。僕を止めようとする黒装束を今度は青嵐が止めに来る。しかし、もう一人黒装束が青嵐の後ろに来た。

「青嵐!后面!」(青嵐!後ろ!)

僕の声より前に青嵐は後ろから来た敵にも対応していた。やっぱり、兄貴はすごい。ここは任せてみんなを探しに行かなくては。船の倉庫の方へ行こうとすると外につながれた父さんたちがいた。

「爸爸!妈妈!现在救助。」(父さん!母さん!今助けるよ。)

「行德!不能来这种地方。你逃走吧」(行徳!こんなところに来ちゃダメじゃない。あなたは逃げて)

母さんの後ろにいた姉さんが言った。僕は何も言えなかった。それでも、かまわない。姉さんが何と言おうと僕は姉さんを、みんなを守るんだ。つないである縄と枷を外し、師範たちの方へ行った。

「行德!我已经没事了。」(行徳!こっちはもう大丈夫だ。)

 青嵐の声がして、僕たちは急いだ。しかしその行く手を阻むように、稲妻の光を跳ね返す青龍刀が僕の目の前に振り下ろされた。

dive95に続く・・・

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