大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2021-08-12 17:25:00

dive92

 切られたはずの傷口を驚いて触る父さんは、姉さんをまじまじと見ながら

「美雪,是你治好的吗?你从什么时候开始这样的事美雪・・・」(美雪、お前が治してくれたのか?お前いつからそんなことが・・・)

 姉さんは、泣きながら父さんに抱きつき

「对不起。对不起我没说话。」(ごめんなさい。黙っていてごめんさい。)

 と繰り返すばかり。そんな二人を引きはがすように黒装束の男が姉さんを連れて行こうとする。にやにやしながら役人が姉さんに言った。

 「你应该老老实实地听我的命令。听好了,不要再反抗了。明白了吗。」(お前が素直に私の言うことを聞いていればよかったのに。二度と私に逆らうな、わかったな。)

姉さんはうつむいたままおびえている。僕はどうしていいかわからず、ただ、じっと姉さんを見ていた。どうしたらいい。役人の刀にかなうものはないし、また父さんたちに手を出されたら・・・状況に驚いていた師範も手が出せずににらみ返すのがやっとだ。青嵐は僕を気遣って肩に手をかけて落ち着かせようとしている。自分の方が戸惑って足が震えているのに、兄貴だからと強がってくれている青嵐には、こんなことに巻き込んでしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだった。連れていかれる姉さんは、僕の前を通るときに少しだけこちらを向き、僕だけに聞こえる様に小声で言った。

「拜托,逃走吧」(お願い、逃げて) 

 僕は、はっとして我に返った。今はどうやっても勝ち目がない。師範たちに目配せをして一緒に逃げるようにしなくては。もう一度機会を待ってみんなを取り戻しに来よう。青嵐に小声でバラバラに逃げて道場で待ち合わせることを言い、師範にも伝えさせた。黒装束に腕を引かれる姉さんが、こちらを少し振り返って僕を見た。僕は小さくうなずき、僕たちはいっせいに散りじりに逃げた。走り去る前に振り替えると父さんが

「逃走吧!」(逃げろ!)と叫んだ。

黒装束の一人が姉さんを後に任せ、僕だけを追って来ようとする。すると今までうなだれていた姉さんが役人に向かって言った。

「如果伤害了我的家人,就再也不听你的命令了。咬住舌头去死。」(私の家族をきずつけたら、二度とあなたの命令は聞かない。舌を噛んで死んでやる。)

 一瞬、苦い顔をした役人が僕を追ってくる黒装束に

「回来吧。孩子不用追了。」(帰って来い!ガキは放っておいていい。)

僕は姉さんの方を振り返り、必ず助けるからと誓い、全速力で走った。そして、途中で青嵐と合流して師範の待つ道場へ向かった。悔しい、許せない。あの役人たち、村長も含めて、憎い、憎い、憎い、憎い。ぶちのめしてやる。僕の中で何かどす黒いものが燃え上がってくるのを感じた。僕の大事な家族を・・・優しい姉さんを・・・父さんを切りやがって・・・母さんに手を出しやがって・・・道場に向かう間、青嵐がいろいろ話しかけてくれていたのだが、僕はこのどす黒い靄のような思いにとりつかれて何も答えなかった。

 道場に着くと師範が待っていた。師範はこの地域の地図を広げ話してくれた。あいつら役人はこの国の都に行くはず。それには陸路で何日も歩くよりも、必ず川を船で移動するはずだ。少人数で戦うなら、そこを狙って襲うしか手がないだろうということだった。今日はおそらくもう船は出ない。明日の朝出る船を待伏せしようということになった。あらかた、作戦を話すと師範は姉さんの力のことを話した。師範の話では遠い昔に神仙たち(仙人のこと)が自然界の力の源、その使い方など研究しその力を自在に使うことができたという。しかし、湖北省、武当山の道教寺院でもあそこまで使えるものなど聞いたことがないそうだ。姉さんにそんなこと聞いたことがない。僕たちは、明日に備えて船着き場の近くまで行き待伏せできそうな場所を探し、あたりを警戒しながら朝を待った。

dive93に続く・・・

 

 

 

 

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