大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-10-18 14:21:00

dive87

 今日も朝早くから山道を走って、その後に青嵐の家に行く。手っ取り早く強さの目標を青嵐に決めた。青嵐に追いつくには、青嵐と同じだけの量の修練をしていたのではだめだ。だから青嵐の家に行く前と帰ってきてから余分に走ったり、薪を割ったり、体力作りに励んだ。青嵐の家から町までは5里(2.5㎞、中国の1里は0.5㎞),その行き帰りも一緒に走る。町にはめったに行くことはないが、お父さんが問屋さんのところに行くときなどについて行き 通りをあちこち見ていた。川でとれた魚や、川海老などを売る店、野菜を売る店。陶器を売る店。革製品、に鉄工具や鋳物を売る店。食堂にお菓子屋。そして武道場『清武館』。赤い看板が高々と掲げられ、門戸から入る者たちの気を引き締める。中からは掛け声や、八極拳独特の震脚と呼ばれる踏み込みの地響きにも似た音が漏れ伝わってくる。型の稽古の時に発せられる、皆が一斉に出す掛け声を聞くと身震いする。ちょっとまねをして声を出すと体の奥から沸騰した熱い力が湧いてくるようだった。僕もあそこで修練をして強くなりたい、いつもそう思っていた。その武道場に、週に一度とはいえ通えるようになるなんて、うれしくて、いてもたってもいられず、青嵐と競争になる。僕が抜かせば、すぐにまた青嵐が抜かす。頑張ってまた青嵐に追いつくが、やはりまだかなわない。すぐに引き離される。遊ばれているようだ。悔しい。今日がだめでも、来週には。来週がだめでも再来週が。絶対追い抜いてやる。

 はあ、はあ、と息を整えながら、武道場に入る。師範はまだ出てきていない。僕たち子供と、体が出来てきている青年部と稽古の時間が違うので実戦はまだ見られない。型の練習がほとんどだ。子供の中でも体の大きな青嵐は何人かの他の門下生と一緒にその先の組手の稽古をしている。この道場でも青嵐は強い方で、もう一人、李功という子と争っている。僕も早くあの人たちとやってみたい。同じ時期に入った子たちと基礎となる構え、型から教えてもらう。まずはつま先立ち、中腰で両腕を前に出しこぶしを握る。この姿勢を保つ。よしと言われるまで。同じ級にあの李功の弟の李秀がいる。なんかお兄ちゃんに無理やり連れてこられているみたいでもじもじしている。僕は自己紹介して、話をしてみた。

 「僕は行徳、お茶園の息子だ。青嵐と一緒に来ている。君のお兄さん強そうだね。」

 「うん、お兄ちゃんは何をやってもすごいんだよ。僕と違って。あ、僕は秀。よろしくね。僕も同じ血が流れてるんだから強くなれるはずだっていうんだけど、僕は運動は苦手だし・・・」

なんだか、優しくて、良い奴のようだ。そういえば白嵐もおとなしいな。兄貴が強いと弟はこうなるのかな。

 「僕は強くなりたくてここに来たんだ。秀も一緒に修練して青嵐やお兄さんを超えてやろうよ。僕と一緒に頑張ろう。」

 「僕はこんなだから、あんまり友達がいないんだ。行徳、これからよろしくね。」

だんだん足がプルプルしてきた。腕もあげてられない。秀はとっくに音を上げてしまった。同じ級にいた周亮と2人になった。負けられない。あっちも僕を見ている。顔に力が入る。二人とも顔が引きつって真っ赤になってきた。足を延ばそうとしたり、腕を曲げようものならすぐに「そっちの負けだ」と言ってきそうなぐらいにお互い相手をにらみ、顎で指図をする。もう、あきらめた奴らがみんなで、どっちが勝つか二人を見ている。修練を励む子供たちを師範も応援している。はじめのうちは道場内が応援の声でいっぱいだったが、時が経つに連れ、静まり返る。緊張が皆に伝わる。二人の息が、食いしばった歯の隙間をもれてくる。しかし二人がついに限界に達したその瞬間、観衆の中の一人が耐え切れずにぷーーーと一発漏らした。一瞬皆がきょとんとしてそいつを見る。僕らもつられてへたり込んでしまう。緊張の糸が切れた道場は笑いに包まれた。僕は立ち上がろうとしたが足が言うことを聞かない。亮も同じだった。二人は這いつくばりながら近寄り、握手をした。

 「お前、強いな。」

 「お前こそ、僕は名は行徳だ。よろしく。」

 「俺は周亮。次は絶対勝つからな。」

 今日、僕には友人と好敵手(ライバル)ができた。こんなにうれしいことはない。しかし、情けないことに帰りは青嵐におんぶしてもらって帰ったことは彼らには言わないでおこう。

dive88に続く・・・

 

 

 

 

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