大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive78
「陳さんが、なんでその名前を知っているの?」
「それはこっちのセリフだよ、藍生。ずっと一緒に働いていたあなたが、あの王藍生だなんて。なんで言わなかったんだ。」
なんだか、話が見えない。
「あなたが王藍生ならば、すべてお話ししましょう。私たちの親のもっと前の世代、此処に中華街ができた当時、料理屋や問屋、貿易商など中国人たちを束ねるリーダーがいました。その人の名は李白龍、四川出身の料理人でした。李さんの一族は四川省の青龍寺とつながりが強く、『未来の日本に王藍生という救世主がやってくる。』という言い伝えを信じていた。その者が来たら青龍寺の和尚に知らせ、丁重に世話をし、協力するようにと言われている。今ではこの中華街を治める五龍会の長たち、5人だけがこの教えを受け継いでいる。五龍とは王を守る5体の龍を意味し、私はそのひとりで料理界の赤龍。あとリーダーの白龍は李家の子孫、青龍は青龍寺出身者の子孫、医師の黄龍、暗部を取り仕切る黒龍がいる。私たちはそれぞれを取り仕切り、皆を守っている。にわかには信じられないが、こうなったら五龍会の長たちを集めそこで判断してもらおう。それでいいですか。」
おいおい、いつの間にか、私が『伝説の救世主』になってるぞ。えらいことになっちゃったな。青龍寺に電話したかっただけなんだけど。あっちも驚いただろうけど、私だって陳さんがそんなにえらい人になっちゃっていたとは、思いもしなかったよ。まあでも、こっちに来てあてもないし、息子たちに近づくと巻き込みそうだから連絡取りたくないしな。この人たちに世話になっておいた方がよさそうだな。麗華たちも、半分中国のここの方が住みやすいだろうし。
「じゃあ、まずは長老たちに逢いましょう。陳さんよろしくお願いします。」
陳さんの計らいでとりあえず今日のところは五龍会の仕切るホテルに泊まれるように手配してくれた。そして夜にはそこの最上階にあるレストランで長老たちと接見し食事をしようと言うことになった。麗華たちも、くたくたなので時間までホテルで休ませてもらうことにした。
ホテルに着くとまずは、風呂に入った。麗華と美雨にシャワーやふろの使い方を教えてやると、とても喜んですぐに入った。シャンプーやリンスなんてなかったから、教えたら興味深々だった。ホテル仕様の分厚いタオルに驚いて、本当にこんなものを使って体を拭いていいのか聞いてくるぐらいだ。そういえばこっちで新しい服、買ってあげなきゃな。陳さんに頼んでみようかな。風呂から上がった二人の髪をドライヤーで乾かしてやると、毎度ながら魔法でも見るような目で見ている。髪も体もさっぱりしたら、すぐに三人とも寝てしまった。真っ白いシーツとふかふかの枕にちょっと緊張していた二人だったが、やっぱり疲れたんだろう。
プルプルプル、プルプルプル、電話の音で目が覚めた。3時間も寝ていたのか。陳さんからの電話で30分後に最上階の『成都』という四川料理のレストランへ来てくれと言われた。麗華たちを起こし、準備するように言った。まあ、準備と言っても髪を結うだけだけどね。髪を結った麗華は、美雨に守護の念を込めてもらった銀の髪飾りと腕輪をつけ戦闘態勢だ。
三人でドキドキしながら最上階に行くと、そこは大きな窓から港町の夜景が見える素敵なレストランだった。奥の個室に通されたが、どうやらここが一番いい部屋らしく先ほど見た場所よりさらにきれいな夜景が広がっている。二人ともはしゃいでいたが、ここが地上からかなり高いところにあるということがわかると窓から離れた。そうこうしていると部屋に5人の男が入ってきた。一人は先ほどの陳さん。いや赤龍だったな。てことは、これが五龍か。この人がリーダーかなと思われる男が話し出した。
「赤龍から聞きましたが、あなたが王藍生さんだと。詳しい話を聞かせてほしいのですがよろしいですか。とりあえず座りましょうか。まずはお茶でも。」
そう言うと、ウェイトレスがお茶を用意した。
香りのいいお茶だ。甘い香りがする。これはあれだ。和尚の好きな。
「これは蒙頂甘露ですね。龍仁和尚が大好きだったお茶です。」
三人とも久しぶりのに四川のお茶を飲んでほっとしていた。しかし五龍は龍仁和尚の名前を聞き動揺している。追い打ちをかける様に美雨は
「でもこれはちょっとあの頃のものより甘味が弱い気がします。」
と言って五龍をけん制。さすが心を読める女は強い。何か試されているなと感じたのでこちらから正直に言ってみた。
「青龍寺の方の子孫の方は・・・」
そう言うときれいな藍染めのネクタイを締めた男が応えた。
「私が青龍です。龍仁和尚のことは聞いています。」
ちょっと攻めてみた。
「そのネクタイは青龍寺の藍ですね。どなたの子孫ですか。どことなく一青に似てますが。」
「一青・・・・その名は先祖の幼き頃の名。ではあなたが山を下りるたびに・・」
「ええ、下の街でお土産にお菓子を買ってあげてました。いつも畑で泥だらけでしたよ。」
すると、横にいた黄色いポケットチーフをした男が、
「私は黄龍。あなたは日本人ですよね。日本名は?」
「守山藍生です。」
「守山藍生・・・ご家族に守山藍という一文字違いの方が見えますか。」
「え!そ、それは私の孫です。孫に何かあったのですか。」
今度は真っ黒なシャツを着た怖そうな男が
「で、あなたはここへ何をしに来たんですか。」
なんか、尋問が激しくなってきたのではっきり言ってやった。
「龍仁和尚、王さんの仇、行徳を倒しに。」
その言葉を聞くと五龍が一斉に立ち上がり後ろに並び出した。そして跪き、手を合わせ言った。
「先ほどまでのご無礼、謹んでお詫び申し上げます。以後あなた様の手足となり、御使命を果たされるまで尽力いたします。この五龍以下中華街のものすべてがあなた様に協力いたします。私共を救済に来ていただき心より感謝しております。」
おいおい、青龍寺に電話したいだけなんですけど・・・どんどん話が大きくなってきてるんですけども・・・・あの黒い人ほんとに怖かったんですけど・・・
白龍さんがウェイトレスに言付けをし料理が運び込まれてきた。先ほどまでと雰囲気ががらりと変わり和やかに食事会が始まった。急に敬われて威厳を保ちたかったが、先ほどまで澄ましていた二人が人の分まで食べようとしていたのを見て苦笑いをするので精いっぱいだった。
dive79に続く・・・・

