大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-09-19 14:11:00

dive76

 改札ゲートの一件で意気消沈の麗華をホームのベンチに座らせて、今から行く中華街という場所について二人に教えておいた。中国大陸勢力と台湾勢力の話をしようとすると、あの後の中国の歴史を話さなければならないから面倒くさい。清国が終わるなんて知らないだろうからな。国民党と共産党なんてどうやって説明すればいいんだろうと思いながら

「あの後、清国は日本や西洋諸国に食い物にされたりして滅んで行くんだ。最後の皇帝溥儀は日本によって建国された満州国の皇帝になるがソビエトに滅ぼされ、後にできた中華人民共和国の満州族代表になる。清国の後にできた中華民国という国民党の袁世凱という人物が建てた漢民族の国『中華民国』ができたが、それに反発する共産党の毛沢東たちに国を追われ、国民党は台湾に敗走する。現在は共産党による『中華人民共和国』俗に『中国』という国になっているため、大陸勢力と台湾勢力は今でも仲が悪い。台湾も私たちのものだという共産党と国を返せという国民党。しかし台湾にはもともとの住人達もいたため、国民党一色にはならないという問題もある。そんな問題が此処日本の中華街の中でも行われている。今から行く中華街とは横浜港が開かれ、西洋諸国やアメリカとの貿易の時に通訳など仲介のために雇われた中国人が、此処に住み始めたのが最初で、1920年代から飲食街として発展してきて今に至る。最初に中華街ができたころは大陸勢力が強く、町を牛耳っていたが、その後というか私がいた時代は台湾勢力の方が強くなり、大陸勢力は山の上に追いやられていた。中華民国、中華人民共和国、それぞれに建国記念日(国慶節)があるが、大通りの店に旗が建てられるのは台湾(国民党)の方が多いのが現状。まあ、ざっとこんな感じだ。」

「へぇーーー、清にいたころからいつもそんな感じだったよ。私たち庶民はその時々の支配者たちと「うまくやる」しかないのよ。日本もそうでしょ。国も町も同じ。すべては支配者たちの欲。あなたが申し訳なさそうにすることはないわ。」

美雨の反応は意外だった。こんなに霊力を操ることができる彼女なら、不老不死や長寿を欲しがる支配者たちから重宝されるに違いないと思ったからだ。

「そうね、昔からそういう輩が私を利用しようとしてきたわ。だから同じところに長くは住むことができなかったの。孤独になるわけでしょ。あなたたちと会った街もそろそろ限界だったの。私のことを知らない時代、国に来られてうれしいくらいよ。それに、そんな者たちに加担したら心穏やかに暮らせないでしょ。そんな人に自然界は力を与えない。そんな力は、闇のモノの力よ。」

また、心を読まれてしまった。まあ、隠すようなことは何にもないけどね。

 ピロリロリーーーン!と曲が流れ、電車が来ますとアナウンスが聞こえた。確かあの時代の中国にまだ鉄道はなかったはず。初めて見る電車に二人とも目を丸くしている。停車して扉が開く。車も驚いただろうけど、馬車はあったからそれほどでもなかったようだが、こんなでかい箱から人がぞろぞろ降りてくるのを見て、ちょっと引いている。じっと入口から中をのぞいている。ぷしゅーーー。扉が閉まった。今度は二人とも固まっている。一本乗り過ごした。仕方ない。石川町までわずか5,6分。こりゃ、タクシーの方がよかったかな。しかし、何事も経験だ。一度覚えれば、この後、一人でも乗れるようになる。

「落ち着け、みんな乗ってただろ。怖くないから、大丈夫。ただの乗り物だから。」

麗華の息が荒い。目の前に立ち、両肩に手をやり、一緒に深呼吸を繰り返す。瞳孔が開き切ってる。だめだこりゃ。さっきまで冷静だった美雨はどうだ。こっちは両目をつむって、なんかの祈りをはじめちゃった。

「麗華、麗華、いいか、次の電車に乗るから私の腕につかまってなさい。電車とホームの間に落ちないように気を付けないといけないよ。美雨、祈らなくてもいいから、何も襲ってこないから、大丈夫だからね。美雨も反対側の腕につかまって、ね!」

ピロリロリーーーン!また曲が流れる。電車が来た。扉が開いてみんなが降りてくる。さあ!乗るぞ。前に進むが、腕が、腕が前に進まない。ぷしゅーーー。2本目も行ってしまった。中華街が遠い。

「藍生!歩いていけばいいじゃない。そんなに遠くないんでしょ。」

「いやいや、麗華逃げちゃダメ。これぐらいできないと日本で生きていけないよ。」

「じゃあ、もう帰る。清に帰る。」

「美雨、何とか言ってあげて」

「藍生!この国は何かおかしいです。今から祈りを捧げます。」

うわーー、美雨もかよ。もうこうなったら、最後の手段だ。

「そうか、うん分かった。帰るか。でもさあ、麗華、電車に乗ったら、もっと可愛くなっちゃうんだけどな。残念だな。可愛くなった麗華見たかったな。きっとすごくかわいいんだろうな。もったいないなぁ。美雨ももっときれいにになっちゃうんだけどな。しょうがないか。うんじゃあ。でもな・・・」

「藍生!本当ですね。その話。」

「そんなに藍生が見たいって言うのなら、妻として、頑張らなくてはなりませんわ。美雨姉さまよろしくって。」

「仕方ありませんね。藍生がそこまでお願いするなら、わたくしも祈る前にちょっと乗ってあげてもいいですわ。」

ピロリロリーーーン!三度目の正直!電車が来た。二人がひきつった笑顔で腕にしがみつく。ドアが開いて人が降りてくる。さあ!腕に痛いぐらいしがみついて前に進む。下に気を付けて、恐る恐る何とかまたいで乗った。汗びっしょりの二人を座席に座らせる。

やっと乗れたことで気を許してしまったのがいけなかった。気が付くと横浜駅、石川町などとうに過ぎていた。

dive77に続く・・・・

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