大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-09-18 20:23:00

dive75

 たどり着いたのはいいが、此処が何処なのか調べないと。近くで地図を見るには、うーーん、あ、そうだコンビニだ。中国生活が長かったせいか日本を忘れ気味だ。あれ?あの人手に四角い板もって話してる。あれはなんだ。20年以上たっていると浦島太郎状態だ。あれ?二人がいない。どこだ!探してみると二人で床屋の赤と青のグルグル看板を見て不思議そうに見ている。

「藍生!これはどうなっているの?下からどんどん出てきて登っていくのに天井まで行ったら・・・」

「ああ、これは理髪店の看板、サインポールっていうんだけど。あれ世界共通らしいけど知らないか・・・回ってるの止めるとただの棒だよ。」

って説明しても一生懸命中をのぞいている。コンビニに行くからついて来てとサインポールから引きはがすように連れていく。コンビニの前の太い通りの標識に16号線のマーク。あれ、ここってもしかして横浜。向こう側にある道路案内標識には真っ直ぐは本牧ふ頭、右は根岸駅って書いてある。やった、わかるぞ、ここは横浜市磯子区だ。昔、この道をバイクで走った覚えがある。そうだ、電話だ。青龍寺に電話してみよう。財布の中に・・・あった。これ使いたくなかったんだよな、斉藤由貴のテレホンカード。でも現金使いたくないしな。財布の中に聖徳太子がいてよかったな。でも電話番号どうやって調べれば・・・あんまり考えてなかった。どうしよう。このままでは、三人で野宿だぞ。うろたえる私を見て二人が落ち着かない。

「どうしたの?大丈夫?」

心配そうに聞いてくる。自分の国に連れてきておいてオロオロしてどうするよ。何か、つてが・・・そうだ中華街、陳さんだ。あの日、最後に石川町の駅で別れたあの陳さん。そうだ店に電話してみよう。恐る恐るテレホンカードを入れる。さらば斉藤由貴よ。

「あの、厨房の陳さんお願いします。あ、陳英明さんです・・・え、オーナー、陳さんが?ああ、そうですか。じゃあその陳さんお願いします。私は守山藍生です。」

待っている間に今度は二人が電話を見て

「あなたは何と話していますか?」

と聞いてくる。麗華は私がおかしくなったのではないかと心配している。そう言っている間に相手が出た。

「あ、陳さん、久しぶり、私です。守山です。元気?」

「あなた誰ですか。守山さんは死にました。私をからかっているのですか?」

「いや、守山です。本物です。信じてください。」

「本物だという証拠を見せてください。できるわけないでしょうが。」

「証拠?証拠と言われてもなぁ。あ、そうだ。いなくなる前のあの日、帰り道で陳さんと話したでしょ。孫が生まれるって。私の名前から一文字とって、藍っていう名前だって。」

「え、あなた、なんでその話を知っているんですか?・・・本当に守山さんなんですか?」

「やっと、わかってもらえましたか。あの、今ちょっと困っていて、それで、今から会いに行ってもいいですか。」

「そりゃぁいいに決まってる。本当に藍生なのか?店はわかるな。表から入って来いよ。」

そう言われて、すぐに中華街に向かった。看板通りに根岸駅にむかい、電車で石川町に。改札を見て私も初めて見てびっくりしたが、前の人が何かをピッとかざすとゲートが開く。なんだろあれ、お上りさんのように三人が眺めてる。何とか切符は買った。自販機の進化というものに驚いたが、二人に悟られないようにするのに必死だった。ゲートを通るだけなのに緊張が走る。まず私が手本を見せる。切符を入れて、通り抜け、切符を取る。長老、70歳の美雨は何とかスマートに通ってきた、成功だ。成功体験は自信につながる。この時代でも私やれるという自信だ。さあ、麗華、心配なのはこいつだ。ドキドキしているのがはた目にもわかる。切符を入れる口を眉をひそめてみている。あちゃー、後ろが閊えてきた。後ろを見て慌てる麗華。頑張れ麗華。泣きそうな目でこっちを見ている。後ろのみんなが麗華をにらみながら他のゲートへ移動していく。

「加油!麗華!」(がんばれ!麗華)

思わず大きな声で叫んでしまった。力が入る。私の声にうなずき、ようやく切符を差し込み口に入れる。機械に吸い取られてびっくりして、ひーー、と悲鳴を上げる麗華。手招きをしてこっちへと促す私。走って駆け寄る麗華。半べそをかいて抱き合う二人を見てよかったとうなずく美雨。しかし、無情にもゲートはブザーを鳴らし私たちをあざ笑う。まだ電車にも乗ってもいないのに、すべてやり遂げたと思って感動している私たちを、最新鋭のゲートがベロを出して私たちを見下すように、麗華の取り忘れた切符を排出していた。まるでお前たちにはまだ早いと言っているみたいに。

dive76に続く・・・

 

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