大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive70
一仕事終えた私たちは、昨日まで使ってきた店を片付けて次の場所、日本を目指す。麗華はあの看板をしっかりと包んで背中にしょっている。たまに来てくれていたあの宿屋の主人も、町を盛り上げるためにずっと此処に居ろと言ってくれたが、そういう訳にもいかない。行徳を追って日本に行くには術もそうだが体力もつけておかなくてはならない。ここに来るのに龍恵の力を借りてきたが、今度は一人でやらねばならん。あの術の本に、時渡りには渡る先の時が近くても離れていても術自体には変わりはないが、持っていかれる霊力、体力は段違いだと書いてあった。体力って点はいっぱい食べてよく寝ればよさそうだけど、霊力ってどうやって高めるんだろう。和尚、そういうこと教えといてくれよ。私はそういうこと初心者なんだからさぁ。そんな悩みもあって、昨日宿屋の主人にこのあたりで不思議な力の湧く場所とか、人がいないか聞いてみると隣にできた大きな町に霊的な力で占ったり、治療をする女性がいることを教えてもらった。町で評判になったその女性も、前はこの街にいて仲良くしていたから自分の紹介だと言えば取り合ってくれるだろうという。未来に行く間に霊力、体力不足で思わぬところに飛ばされても困るので、麗華に相談し、町に行ってみることにした。体力不足を補うためにご馳走を食べようと誘ったら、鼻歌交じりに歩いて行った。あれとこれとと食べたいものをいろいろあげている。飛んで行くんだから鴨を食べようとか、龍の力を得るために鯉を食べたらいいんじゃないかとか、自分が食べたいだけだと思うけど、麗華が元気になるならそれでもかまわない。ひと月間働いてお金は結構たまったが、中国を出るのにこのお金を持っていても使えないので全部使ってしまっても構わない。そうだ。麗華に何かプレゼントしよう。
町に着くとちょうどお昼時、大きめの料理屋に入り、麗華の好きなものを注文していいよと言うと、よだれ鶏やらいろいろ食べ切れないほど頼んだ。故郷とお別れするんだ、これ位させてあげないとな。思い返してみると、ここ数年で麗華は失ったものがたくさんある。その上、故郷まで失うんだ。私は彼女に何をあげられるのだろう。彼女の心の失ったところを新しく、楽しいもので埋めてあげたい。何か、生きていくお守りのような、道しるべのような。私がいなくとも私の代わりに彼女を支えてくれるようなものがいい。私がそんなことを考えながら彼女を見ると、食べるのに夢中だった。そんな彼女が愛おしくてたまらない。できることならもう一度二人でお店をやってのんびり暮らしたい。客席でお客さんと話して笑っている麗華を見ていると、ああ、できることならばこの景色を写真にとって置きたいと心から願う。このまま、行徳たちのことなんか忘れてしまいたい。ついひと月前は行徳のことが許せず、どこまでも追いかけてなんて思っていたが、危険を冒して戦うことの恐ろしさや、毎日の生活の楽しさに戸惑い、悩み疲れていた。許してなどはいないが戦うことでまた何かを失う事の怖さに心がついていけない。私にはあんなハリウッド映画のアメリカ人みたいなヒーロー願望はない。 いつかこの心を鷲掴みにする恐怖から解放されることはあるのだろうか。そんなことを思いながらも体力をつけるためにしっかり食べておいた。
店を出るときに流行りの占い師のことを知らないかと聞いてみた。すると、どうも最近体調が悪いみたいで休んでいるらしい。この店の裏あたりに住んでいると聞き、ちょっと行ってみた。売れっ子が住んでいるにしては薄暗い感じの長屋のようだ。一軒ずつ聞いていくしかないか、とあきらめていたら人が出てきた。なんだか医者のようだ。付き添いの人と一緒に出てきた。二人とも困った表情で話している。そば耳を立てて聞いてみると、原因不明で倒れてしまって寝たり起きたりを繰り返しているらしい。医者は原因がわからずお手上げでうなだれて帰っていった。もしかしてと思い付き添いの人に声をかけ、占い師のことを聞いてみた。やはり倒れたのは本人らしい。宿の主人の紹介で来たのだが症状を聞かせてくれないかと聞いてみた。するとあの石の症状だった。巻き込む恐れがあるので、すべてを話すわけにはいかないがもしかしたら治せるかもしれないと言うと、何でもいいから来てくれと腕を引っ張られた。中に入るといろんな魔除けと思われるものが置いてあり、なるほどそっち系の人とすぐにわかる部屋だった。麗華に前に潜った時にとっておいた石の粉を出すように言う。特に害のあるものではないことを告げ、占い師に飲ませろと言う。朦朧として起き上がり薬を飲む占い師。少し時間がかかるからあとでまた来ると言い残し、部屋を出た。麗華にどこに行くのか尋ねられたが、ちょっと付いて来てと言いごまかした。料理屋に行く途中に見つけたアクセサリー屋に寄った。貴重なものは店先に置くわけがないので奥まで行った。店主の居る奥の棚には高価なものがそろっていた。その中でも目を引くのは青い宝石の付いた銀の腕輪だった。思い出すのは、孫の藍にやるつもりだったあの宝石。同じような色の宝石にひかれてしまった。もう一つ銀細工の髪飾りにはこれにも同じ宝石がついている。目を輝かせている麗華にどっちがいいか聞いてみた。悩んでいる。どっちも欲しいのだろう。店主にいくらか聞いてみた。二つ買うからまけてくれと言ったら喜んで負けてくれた。それでも持ち金の半分くらい持っていかれたが。あと何日此処に居るかわからないから、全部使うわけにもいかんし。満腹の上に腕輪と髪飾りにご満悦の麗華は、いつもの鼻歌を大きめで歌ってる。自慢げだ。かわいいなぁ。すぐに占い師のところに戻り、様子をうかがった。意識が戻ったようで寝床に座っていた。おつきの方に紹介され、話をしようとした。しかし、私を見るなり皆まで言うなという感じで、薬の礼を言い、わかっていますと。私の後ろに何やらいるのかな。準備をしておくから明日来てくれと言う。疲れているだろうから、宿屋を紹介してもらいその日はいったん帰った。
dive71に続く・・・

