大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive68
どうも、もう少し手前に大きな宿場町ができたため、こちらの街は人が少なくなってしまったらしく閑散としている。街道を往来する人はいるものの一日に移動する距離的にも隣の新しい街の方が便利なことと、河川からの荷上場にも近いため荷役の人たちにも便利なことが理由で古い方を使う人がいなくなってしまった。建物はまだ残っているものの、人の気配がしないところが多い。宿屋があったのでその日はそこに泊まることにした。宿屋の店主に町のことなど少し聞いてみると、空いてる建物は所有者もわからないところが多く、朽ちていくばかりで困っているそうだ。それならちょっと借りてもいいかと、聞くと、何をやるのかと言うので、担々麺屋だと。それなら、3軒向こうの店が元麺料理屋だったから、そこを使えばいい、前のやつは、隣町に行ってしまったから好きに使えばいいよと言う。願ったりかなったりだ。未来のことを見てきたからとはいえ、こんなにとんとん拍子に進むと何か罠でもあるんじゃないかと疑ってしまう。罠?罠を張ってるのは私ではないのか。そうだ。ここで私は未来に種をまくのだ。しかしその後がどうなるのかまでは見ていない。誰がこの種を育て花を咲かせるのか。未来で石を作り敵の襲撃に備える。私たちの意志を継ぐ者が現れることを祈るばかりだ。
次の日、早速麗華と店の掃除に行った。
「虽然只是一会儿,这是我们第一家店」(少しの間だけど、私たちの初めてのお店ね。)
楽しそうに掃除をしている麗華を見ていると、なんだか昨日ここへ過去から飛んできた時のことを忘れてしまっているようだ。私たちの店、そう、それならば、あの新しく作った私の担々麺を出すべきだ。麗華に相談すると二つ返事でそうするべきだと言ってくれた。あらかた掃除を済ませ材料を買いに行き、早速第一号を作ってみる。あーー、なんだか落ち着くんだよね、調理してると、と言うか調理場に立つとかな。いつか自分の店を持ちたいなぁ、なんて思っていたけど、成り行きとはいえ、こんな形で開店させることになるなんて人生何があるかわからないものである。でも、何かきっかけがないと自分で始められないものなのかもしれない。誰かが、『もういいよ』と言ってくれないといつまでも修行してしまう。全部自分の気持ち一つなんだよね。いつか、いつか、なんて言ってるうちに時期が過ぎちゃうんじゃないかな。私にとってはいい機会なのかも。
客席に座ってこっちをのぞきながら麗華が待ってる。掃除でおなかがすいたのか足をバタバタさせている。またこっちをのぞいてる。あまりお客を待たせてもいけないので、急いで作る。麺をゆでている間にスープを用意する。ゴマとナッツのいい香りだ。もやしとニラをゆでておき、麺を上げてスープにドボン。茹でたもやしとニラをドカッと乗せる。肉みそをどっさり掛けたら、辣油をたらたららららー。できあがり。さあ、客席へ。
「让您久等了。」(お待たせいたしました。)
着いたとたんに、どんぶりを抱えて混ぜ出す麗華。無言。ただただ無言で食べている。こっちには目もくれない。ねえ、ちょっとなんか言ってくれないかな、なんて思いには触れもしないでがっついている。たまにレンゲでスープをすくって飲んでは、また麺を食べる。お茶漬け屋のコマーシャルでも見ているかのようだ。あーー、もうなくなっちゃうよ。
「啊,谢谢您的款待。很好吃。」(あー、御馳走様でした。美味しかったです。)
そう言われて少しほっとした。これで準備はできた。後はあの男が来るのを待つだけだ。そう思い麗華にも片付けて帰ろうと言うと、
「等一下,有没有忘记?」(ちょっと待って、忘れてない?)
そう言うと、荷物の中から持ってきたものを表に持って行った。そして店先に打ち付けた。そうそれは少し焼け跡の残ったあの看板。打ち付けられた看板はまるで開店を祝って笑っているようであった。そう、あの時王さんが笑ってくれたように。
dive69に続く・・・

