大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive58
店に着くと早速作り始めた。和尚と相談して、王さんの担々麺を作り二人で味見する。
「嗯,总觉得不对。蓝生,你没有忘记什么吗?」(んーー、なんか違うのう。藍生、何か忘れておるのじゃないのか?)
「好好地做着。按照小王说的做。」(ちゃんとやってます。王さんの言うとおりにやってます。)
何度も何度も、作ってようやくこれだと思って、和尚に確認を取り、早速、潜る準備を始める。和尚の気合もろとも光が凝縮し、一気にどんぶりの中に、ダイブ。泳ぐというよりも、もがくに近い動きであたりを探す。ネギやミンチをかき分け、麺の間をくぐり抜け、辣油の赤をよけながら探す。しかし、一向に石らしきものは見つからない。やはり私の作ったモノではだめなのか。和尚に戻してくれと頼み、どんぶりから出る。マスクをはずしもう一度、担々麺を作る。何回か作る。また潜る。探す。ない。また作る。潜る。探す。ない。和尚も私もへとへとだった。王さん・・・・泣きそうになる。・・・どうしたらいいんだ・・・。和尚も手詰まり感が否めない。そこへ、麗華さんがやってきた。王さんの容体にあまり変化がないので、私の様子を見に来てくれたのだった。今までの経緯を説明して、これからまた潜ることを話す。そして、また王さんの担々麺を作ろうとした時、麗華さんが
「蓝生,那可不行。请做你的担担面。请制作你发自内心能笑出来的担担面。刚才哥哥说了。」(藍生、それではだめです。あなたの担々麺を作ってください。あなたが心から笑うことのできる担々麺を作ってください。そう、先ほど兄が言っていました。)
和尚がそれを聞き、今はそれしか方法がないかもしれないと麗華の言い分に賛成した。私にはまったく自信がなかったが、王さんがそう言うならと踏ん切りをつけた。早速、麗華さんに材料のニラともやし、それも太くて新しい、根や豆の臭みの少ないものを買ってくるよう頼んだ。俺は前の日に何回も試して行きついたものを早速作った。王さんのモノとは似ても似つかない担々麺を見て、和尚も麗華さんも呆気にとられている。白濁したとろみのあるスープからは甘いナッツの香りが、その色に生える様に白いもやしと緑のニラ。その上には、たっぷりうま味を浸み込ませたつやつやの豚ミンチ。そのホンワカした森と大地のようなどんぶりを引き締めるように真っ赤な辣油からは辛い雰囲気はもちろん、何とも甘いエキゾチックな香りが漂う。
「和小王的不一样,这是我的担担面。请尝尝。」(王さんのものとは違いますが、これが私の担々麺です。どうぞ食べてみてください。)
和尚と麗華さんは、恐る恐る顔を見合わせながらどんぶりを手に取る。麗華さんなんかこっちの様子を見ながら、レンゲでスープをすくっている。匂いを嗅ぎ大丈夫そうだという感じで一口。えっ!っていう感じで二口目。上にのっているシャキシャキのもやし、とニラを食べ、ようやく信用したのか麺に箸を伸ばす。
「丽华,请全部混在一起吃。和尚也。」(麗華さん、全部混ぜて食べてみてください。和尚も。)
二人が覚悟を決めた様子でどんぶりの中を混ぜる。うまみを吸ったミンチがスープの中に入り、先ほどまで別々に味わっていたスープと麺と野菜の間を取り持って、皆がまとまったハーモニーを奏で始める。お酢と辣油がいいアクセントになって。和尚よりも後から食べ始めたのに、スープを残しているとはいえ、先に食べ切ったのは麗華さんの方だった。
「蓝生!很好吃。这是未来日本的担担面吗?」(藍生!すごくおいしかったわ。これが未来の日本の担々麺なの?)
麗華さんが笑顔で聞いてきた。和尚も食べている箸を止め、こっちを見ている。
「不是。新过去的担担面。」(違うよ。新しい過去の担々麺さ。)
麗華さんは不思議そうにこっちを見ながら、それでも名残惜しそうに一口ずつ飲んでいる。そんなところも可愛い人だ。
「我想让哥哥吃这个。」(これを兄に食べさせたいです。)
石を探してからと思ったが、私も出来上がった私の担々麺を王さんにも食べてほしかったので賛成してすぐに作った。家まで運び、王さんを起こして食べてもらった。最初は私の顔とどんぶりを何回も見て「なんだこれ」と言う感じだったが、一口、二口と進むにつれ、「ふむふむ」から「ほーー」に変わり、終いには「うん」に変わった。そして笑った。呵呵と笑ってくれた。
「蓝生!太好了!这是你的担担面吗?太棒了。好吃。那时帮助你是件好事。」(藍生!やったな!これがお前の担々麺か。素晴らしい。うまい。やはり、あの時、お前を助けてよかったよ。)
うれしかった。本当にうれしかった。喜ばれるって、こんなにうれしいもんなんだと初めて知ったような気がする。おじさんはまた泣いてしまった。
「嗯。现在的你,一定能做我的担担面」(うん。今のお前なら私の担々麺を作ることができるだろう。)
「你在说什么呢,小王快点好起来再做担担面吧」(何を言ってるんですか。王さん早く良くなって担々麺を作ってください。)
「蓝生!最后能见到你真是太好了。这样就可以去妻子那里了。真的非常感谢。」(藍生!最後にお前に出会えて本当に良かった。これでようやく妻のところに行ける。本当にありがとう。)
「哥哥,别说傻话。不要把我丢下。」(兄さん、馬鹿なこと言わないで。私を置いていかないで。」
「藍生!请照顾丽华。她是个爱撒娇的人。请疼爱她。」(藍生!麗華のことをよろしくな。こいつは甘えん坊だから。可愛がってやってくれ。)
「王师傅,请多教我一些。请稍等一下。哥哥,我还有很多想问的事情。想再一起笑一笑。」(王師匠、もっといろいろ教えてほしいんだ。ちょっと待ってくれよ。兄貴、まだ聞きたいことがいっぱいあるんだよ。もっと一緒に笑いたいんだ。)
そういって王さんの肩を掴もうとする手を和尚が止めた。
「蓝生!小王已经去了。」(藍生!王さんはもう行ったよ。)
王さん、王さん・・・助けてあげられなかった。何もできずに、ただただ泣いた。
dive59に続く・・・・

