大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-08-05 20:39:00

dive49

 一晩明けて、目が覚め天井を見上げる。えらいことになった。再婚するのか。息子たちなんて言うだろうか。何の相談もなく、なんて言っても電話もできないもんな。突然言われて考える暇もなかったけど、時渡りの術で元の時代に帰ることになったら、どうしたらいいんだろう。一緒に連れていく・・・なんてな。でもそういえば担々麺の時、和尚の術に同調させることによって小さくなって潜ることができた。ってことは、俺が二人分頑張れば・・・いやいや、和尚に手伝ってもらって・・・和尚に聞いてみよう。とりあえず今日も術の修練だな。起き上がって、朝の修練に向かう。そういえば、昨日の帰り道、和尚に冷やかされながら、一緒に暮らすのかとか聞かれたけど、そういうことも考えないとな。それより、麗華さんのこと、何にも知らないけど・・・お見合いってこんなものかな。そういや、日本も昔は知らない人のところへ嫁入りするとかあったらしいけど、それよりはいいんだろうか。『可愛いな』だけでもあれば、いいほうかな。すごい鬼嫁だったり・・・まあ、そんなことはなさそうだけど。一緒に暮らすって、私の収入源、呵呵 のバイト代しかないんですけど。寺ではお金いらないし、まあ、一青のお土産代ぐらいだな。所帯持つなら働かなきゃな。でも俺のできることなんて、調理ぐらいだしなぁ。呵呵の2号店なんてどうかな。そうすると麗華さんが2人いるなぁ。そんなことを考えながら上の空でお経を読んでいたら、和尚に叱られた。

 朝の修練が終わり、山を下り呵呵へと急ぐ。昨日の今日で麗華さんに会うのにどんな顔をしたらいいんだろう。そう思いながら大きな声で

「早上好!」(おはようございます!)

と店に入ると目の前に麗華さんが。一瞬2人とも黙る。

「早上好!藍生。我一会儿有话要说。」(おはよう!藍生。後ではなしがあるのだけれど。)

「我也想说。」(私も話したかったんだ。)

ようやくいつもの麗華さん笑顔になった。よかった。やっと落ち着いた。

 厨房に入って手伝いを始める。王さんはいつも通りに黙々と仕事をこなしている。相変わらず手際がいい。

 「欢迎光临!几位?」(いらっしゃいませ!何名様ですか?)

 麗華さんの声がする。お昼の忙しい時間が始まる。

 「担担面4人份」(担々麺、4杯)

 どんぶりを用意する、お湯を入れどんぶりを温める、麺をゆでる、

 次々入ってくる注文をさばく。2杯、5杯、1杯と続く。下がってくるどんぶり。また入る注文。まるでテトリスみたい名ゲームをやっているみたいだ。淡々と作っていく王さん。盛り付ける間に次の麺を入れる。出す。次のどんぶり、次の麺。グラグラととわく麺ゆで窯、その前にずっと立ち1杯ずつ仕上げていく。同じリズムで出来上がるそのどんぶりに王さんの思いが詰まっているのが見えるようだ。前に一度、王さんに習って作ってみたのだが、なぜか王さんのものほどおいしいと思えない。何だろう。何が違うのか、王さんに聞いても、「なんだろうね?」という。仏作って魂入れずってことなのかな。私も今まで調理師として20年以上の経験があり、これに近い経験がないわけではない。何と説明していいか、『自分のモノ』になっていないという言い方が一番近いのではないかと思う。先輩が作ったモノ、どこかのおいしいお店のモノを食べて、自分というフィルターを通してできたモノには特別な説得力にも近い力がある。どう、これうまいでしょ、とか、これ食べてみてとか。まねはまねなのだ。しかし自分なりの解釈の上に表現しようと出したまねは、まねを超えるのだ。何かで聞いた話だが、『真似る』は『学ぶ』の語源だという。そう、そのモノを学んで、出した私なりの答えの中には、私の思いが宿っているということだと思う。脈々と受け継がれていく伝統文化にもにたところだろう。先代のモノを今の代の人が習い、学びながら解釈し、自分なりに再構築する過程で新しいものが足されていくというまさに遺伝子的なものである。自分のモノになるのはいつのことやら、と思いながら出来上がったどんぶりを麗華さんに渡す。笑顔で受け取る麗華さん、かわいいなぁ・・・。

 お昼が終わると、麗華さんに呼ばれた。

「喂,昨天的话是真的吗?你喝醉了吗?」(ねえ、昨日の話は本気?あなた、酔っぱらってたの?)

ちょっと、困ったような、

「是的,我是认真的。但是我很为难。」(はい、本気ですよ。でも困っています。)

私は正直に答えた。私の現状を知らないと向こうだって困るだろうし、それについて向こうの気持もわからないと。今までの私の人生のことこれからのこと、術の修練のこと、むろん仕事、収入、住まいなど現実的なことも忘れずに。すると、私の心配をよそに、彼女は、

「你真的考虑了很多呢。但是,我想问的不是那样的事。」(いろいろ本気で考えてくれたのね。でも、私が聞きたいのはそんなことじゃないの。)

「嗯,什么?」(え、なに?)

「蓝生!你喜欢我吗?」(藍生!私のこと好き?)

「是的。当然喜欢。」(はい、もちろんすきです。)

「那就好了。其他的事情没有问题。那种事,两个人一起努力就好了。」(それならいいわ。他のことは問題ではありません。そんなこと、二人でがんばればいいのよ。)

呆気にとられた。でも、好きになった。二人で頑張ればいいか、そうだね、その通りだ。頑張ろう、二人で。

dive50に続く・・・

 

 

Today's Schedule
2026.10.30 Friday