大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-08-02 14:08:00

dive45

 王さんたちと別れ、和尚と二人、寺に戻る道すがら、明日これを砕いて薬にしてあの夫婦のところに持っていこうという話になった。相変わらず疲労感は強いが、前回とは違い倒れるほどではなかった。王さんの作ったおいしい担々麺のおかげだろうか。王さんも自分の作ったものにこんな力が宿っていたとは思ってもみなかっただろう。あの石を食べることによって健やかな幸福感にあふれ、呵呵と笑ってしまうのではないか、と私は推測していた。やっぱり王さんはすごい!そう思っていると、和尚が、あれを作るには多分な霊力、思いが必要なのだ、と教えてくれた。修行と同じく、毎日繰り返し練習する。何度も、何度も。それも思いを絶やすことなく、それでいていいものを作るという修正作業も忘れずに。焦らずゆっくり、正確に同じことを毎日やり続けるそれは、まるで念仏を唱え、祈るそれであり、武術における突き、蹴りのそれと同じことだと。達人とは一滴、一滴落ちる水が岩を穿ち、進むように、ただ一点に向かって思いを極め続けることで達する者のことであろう。思いを達するという行為は魂、霊力の修行に等しいと和尚は言う。ゆえに達人とは霊力の高いものが多い、というのは必然であろう。法力というのは印や真言で仏の力を借りたものでこれとはまた別の修行、仏門の力であると言う。

 寺に戻り、二人で石を見てみると書物にあった石の色とは少し違うようだった。先代の和尚の時にはもっと青みがかった石だったらしい。もしかしたら石にもいろいろあるのかもしれない。私が潜って取ってきた石の他にも、あの場所にはあったのではないだろうか。その時思った。では邪心の塊、すなわち石はどんなものだろうと。あの流行りの麺料理屋のどんぶりに潜ったら・・・私自身が作ったものに潜ったら・・・考えるだけで、口にするのはなぜかためらった。石を砕くのが力仕事のため、和尚の弟子の千道を呼んだ。まず、布でくるみ、石の上に置いて金槌でたたいた。意外とすぐに割れ石粒ぐらいになった。それを石臼の中に入れて引いていく。粉になった。これを薬の様に飲ませればきっとよくなるだろう、そう願いながらすべて粉にした。和尚とそれを持ち、また山を下り病人の家に行った。すぐにこれを飲ませなさい、と渡すと夫は妻を起こし飲ませた。少し様子を見よう、と3人でお茶を飲みながら待った。1時間ぐらいたっただろうか、

「老公!老公!」(あなた!あなた!)

妻のよぶこえがする。三人はっとする。椅子を倒し駆け出す夫。後を追う私たちが見たのは、顔色もよくなり抱き合う妻の姿だった。泣けた。年を取ったせいだろうか。すぐ泣いてしまう。夫が和尚に土下座をしようとして止められる。妻は何のことだかわからずに夫を見ている。泣きながら礼を言う夫を見て慌ててお辞儀をする。知らない人である私がボロボロ泣いているのを見て、不思議そうに困惑しながら、またお辞儀をしている。夫に何がどうなっているのか聞きたいが、そんな雰囲気じゃなさそうなのを見て自分が寝ている間に大変なことがあったのだと察知したのだろう、黙ってもじもじする。和尚が礼を断り、また何かあったらいつでも来るように告げ、一緒に家を出た。寺に帰る前に王さんにも報告をして一件落着。麗華さんも嬉しそうだった。笑顔の可愛い人だ。王さんの手伝いを懸命にしている。誰か嫁に欲しがるだろうに、王さんが心配なのかなぁ。いろいろ思いながら見ていると目が合って、またにこにこしてくれる。私も満面の笑みで返す。そんなとき急に王さんが、

「今晚开酒宴吧。蓝生也有拜托。」(今夜祝杯をあげよう。藍生にお願いもあるんだ。

「那太好了。一定去拜访。那么,我晚上再来。」(それはいいですね。是非とも伺います。では夕方にまたお邪魔します。)

そう言って寺に戻った。和尚の部屋でお茶でもしようと言うので行ってみると、

「有奇怪的事情。没有那本书!蓝生,不得了!」(おかしい。あの本がない!藍生大変じゃ!)

和尚は寺の者たちに、誰かここに入ったか確かめるため、千道を呼んだ。慌てて千道がやってきて、和尚に本を知らないかと尋ねられたが、和尚が出て行って以来だれもここに近づいていないと言う。落としたのかもと思い、書棚の後ろを探す和尚。その時、一瞬、千道の口元が緩んで笑ったような気がした。ん、探すふりはしているけれど目線は和尚を気にしているようだ。おかしい。素知らぬふりをして千道を見張っていると、懐から本を出して

「和尚在这里。掉在了茶棚下面。」(和尚様ここにありました。茶棚の下に落ちていました。)

と言った。おいおい!こいつ何者だ。和尚は

「哦,在那里吗」(おお、そんなところにあったか。)

千道に感づかれないように和尚の近くに行きお茶の用意を促した。用が済んだ千道はさっさと部屋を出て行った。私はそれとなく千道の素性を聞いた。何でも他の宗派の寺にいたのだが、そこの寺が廃寺になり、和尚が引き取ったという。小僧の中では一番年上だったので和尚の傍仕えとなったそうだ。他の寺への手紙や外の用事などで外へ出る機会も多いという。なんかあやしい。興味本位で本を見ていたにしてはやけに和尚の応対が手馴れている。それにあの笑みはなんだ。一仕事すんだし、ちょっと寺の中を探ってみるか。

dive46に続く・・・・

 

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