大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive44
テーブルの上にドンと置かれた担々麺。この中に飛び込むなんて馬鹿な話、昭和のアニメにもなかったなぁ。いい大人が4人そろって真面目にそれをやろうっていうんだから、笑っちゃうよな。そう思うと緊張の糸もほどけていく。
「干吧!气势!气势!气势!」(やるぞ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!)
和尚たちにはわからないだろうが俺は今アニマル浜口を味方につけた。そして心の中で♬クレイジーモンキーをスタートさせ、ジャッキーを憑依!先日とは違い、潜るべき担々麺は目の前にあるのでイメージしやすい。そうだ、あの時を思い出せ。潜れ!潜れ!あの中に!少しずつ体の周りを包む靄のようなものが現れだした。和尚が印を結びながら、タイミングを見計らっている。王さんはこちらを見て異変に目を丸くしている。集中して目を閉じ、思う。救うんだ、みんなを救うんだ、力をくれ、私に力を貸してくれぇー!靄が全体を包み、光だした。そしてどんどん凝縮されるように光が濃くなっていく。激しく渦を巻くように体の周りを巡る光の包みが輝きを増したその瞬間、和尚が、藍生!と叫んだ。その声に麗華さんが一瞬、びくっとして座り込んでしまう。同時に光の渦がギュッと小さくなってどんぶりの中に飛び込んでいく。今度は目が回らないように縮む瞬間に目を閉じ息を止めた。バシャン!と大きな音がして風呂にでも飛び込んだように熱い。足が踏ん張る場所を探すが、宙を蹴っているようにもがもがするだけで力が入らない。手に当たるものがあったので、それを掴んで体を引き寄せる。あれ?息ができる。でも熱い。熱くてもたない。「和尚!」と心の中で叫ぶ。
「没关系吗?看见什么?请找发光的石头。」(大丈夫か?何が見える?光る石を探すのじゃ。)
「好烫!太烫了!」(熱い!熱すぎるよ!)
「不能冷却。冷却后石头就会消失。赶紧!」(冷ますことはできぬ。冷ませば石は消えてしまう。急ぐのじゃ!)
和尚め!帰ったら熱々の風呂につけてやる。そう思いながらも周りを見回して探す。しかし、ゴマや砕いたナッツが行く手を阻む。王さん、もうちょっと少なめでお願いします。あー!でもそうしてケチって作ったら石が出現しないのかも、と思うと複雑な感じだ。早く探さなくちゃ。それにしても視界が悪い。それでも麺の間をくぐっていくと右手の甲にカチンと当たるものがあった。掴もうとするとぬるっと逃げる。あれ、石じゃないのかと思い、目の前になるように泳いで見てみる。青緑に光る宝石、そう、まるでエメラルドのようだった。掴もうとするとすり抜ける。するり、ぬるん、つるっ、何度やってもつかめない。熱くなってきた。もう限界だ。和尚につかめないこと、熱くて限界なことを念で送る。すると、書物には素手でつかんだと書いてあった、まとった霊気が守ってくれると。こんなに熱いのに素手なんて、というと、掴んだ瞬間に術を解くという。じゃあ、桶にいっぱい冷たい水を用意しておいてくれと頼み、準備ができたところで手袋を外した。ぐあーー!熱い熱い、何が守ってくれるだ!めちゃめちゃ熱いじゃないか。早く宝石を!急いで掴む。掴めた。早く術を解いてくれ!
どんぶりから飛び出ると、冷たい水をジャバジャバかけられた。石を握りしめた手を、桶に張った冷たい水で洗うようにほどいていく。顔にかけられたマスクを外し、急いで石を見る。中から出てきたのは、先ほどガラス越しに見た宝石だったが、先ほどとは段違いに輝いている。見たことのない大きさの宝石の塊を手にして眺めていると。ずぶ濡れの私を心配して、麗華さんが駆け寄り、顔を拭いてくれた。その麗華さんの後ろから、王さんが飛びついてきた。びっくりしてる私の頭をわしゃわしゃとなで
「太好了。干得好!呵呵・・・」(やったな。よくやった!あははは・・・)
王さんが笑うのを見て、ようやく私も笑った。私が笑うのを見て、みんなの緊張も解け笑いあって泣いた。なんか、うれしくて。うれしくて。そしてみんなで約束通り担々麺を食べた。実にうまく、心を軽やかにしてくれる一杯だった。そしてまた皆でおおいに笑った。
しかし、その数日後、まさかこんな事態になるとは思ってもみなかった。
dive45に続く・・・・

