大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-07-30 18:58:00

dive43

 次の日、朝の修行が終わるころに、藍染屋がやってきた。

 「已经做好了,请试穿一下。是最上等的蓝染。」(仕上がりましたので、ご試着ください。最上位の藍染めです。)

 持ってきた包みから丁重に出された衣は夜明けの天空の様に染め上げられ、見る者の心を穏やかにさせ、すべての物を清めてくれる力を持っていそうだった。藍染めとは奥の深いものだと改めて感心する。広げてみると背中にみかん色の文字で『潜航厨師』という刺繍が施してあった。潜る料理人って私のことか?はぁ、やっぱり私がやるんだな。自分で、やると決めてはいたが、人から『さぁ!」と言われるとちょっとしり込みしてしまう。本番に弱いタイプなのかなぁ。みんなやる気になっているのに潜る人がビビッてどうする。でも危険なのは私だけなんだよね。弱い部分が顔を出し私の心を蝕んでいく。いったん染まり始めるともう手が付けられなくなってしまう。気分が重くなり下を向いてしまう。連鎖反応の様に体がこわばり座り込んでしまいそうになる。まるで一人ぼっちで歩く寂しい真冬の夕暮れのようだ。残りかすのような気力を振り絞り、こわばった体にぎこちなく羽織ってみる。すると、肌に触る柔らかな感触に春の風のようなすがすがしさがあった。何だろうこの衣、しなやかで軽く、動きやすい。そうして動いているうちに体のこわばりもほどけていく。さっきまでの弱気が影を潜めていく。私が救うんだ。そう背骨の芯にまで言い聞かせ、喝を入れる。顔や手先、足先まで覆うようになっているので青いスキューバダイビングのスーツのようだ。頭部は生地が分厚くなってい目のところにガラスがはまっている。よし行こう!

 青い衣を背負い和尚と一緒に山を下りる。なぜか今日の和尚は口数も少なく、いやによそよそしい。和尚があまり私の目を見ないような気がして。あんまり気になったので思い切って聞いてみた。すると、何の関係もない私にこんな危険な役目をさせることを考えて、いまさらながら自分のふがいなさに申し訳なく思っていたそうだ。さっきまで悩んでいた自分と同じように悩んでいたとは、話してみて何かすっきりしたような感じがした。気が晴れた私は勢いあまって

 「没关系!交给我吧。结束后一起吃呵呵的担担面吧!」(大丈夫!任せなさい。終わったら呵呵の担々麺を一緒に食べよう!)

そういって豪快に呵呵(アハハ!)と笑って見せた。それを見た和尚は、一瞬呆気にとられたが、一緒になって笑った。二人とも空元気なことなど十分承知の上であったが、ちょっとでも弱気を見せると、ずるずると引き込まれる沼が足元に広がっているような気がして無理に笑った。

 呵呵に着くと『本日休業』の札がかかっていた。三人そろった。王さんも気合十分!麗華さんが心配そうに見守る中、早速調理にかかる。その間に私は衣を装着する。顔のところは和尚に手伝ってもらって準備完了。麺をゆでる王さんの顔も真剣だった。和尚にいつものようにお客さんに出すときの気持ちで作るのじゃぞと言われながら作っていく。ゆであがった麺に薬味とゴマ、ナッツをかけ最後に肉そぼろと辣油の入ったたれをかけ完成。準備はすべて整った、いざ!

dive44に続く・・・・

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