大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-07-26 20:54:00

dive41

 目が覚めると薄暗い部屋に寝ていた。ものすごい脱力感と、痛みに襲われた。痛いというのも節々が痛いとか、筋肉痛とかではなく、何かが全身を駆け巡った道が痛いのだ。力づくで何かにこじ開けられた感じで手首から腕を通り、肩、背骨から一方は腰を抜けて足へ、もう一方は首を通って額の奥まで。雷に打たれるとこんな感じなのだろうかと、何十の仏が見守る大曼荼羅の天井画を見上げながら考える。仏はなぜ私をここへ連れてきたのだろう、ああ、藍はもう生まれたんだろうな。会いたかったな。じいちゃんここにいますよー。ああ、あの宝石どうなったかなー。大日如来がすべてを見通すような目でこちらをじっと見ている。すべてのことが必然ならば、いつかここに来た理由もわかるのだろうか。流されるままにここにいるけれど。私の信じる言葉の中に「渦中の人」という言葉がある。本来この表現は騒ぎの中心人物のことだが、私が考えているのはちょっと違う。渦に巻き込まれた状態の人には、今、自分がどんな状況にいるのか、外はどうなっているのかなどの判断がつかない。俯瞰で見ることができないという風にとらえる。そう考えると今自分に起こっていることは大変なことだけれども、時を超えて俯瞰で見れば、これはこの先に意味があることかもしれない、というのを、自分は「渦中の人」だから、今は頑張ってこの問題を解決しようという風に変換している。いつでも目の前にある問題を解決していくことで前に進んでいくと信じている。元の場所に帰りたいが、今はこの時代を乗り切らなくては。

 部屋の隅にある扉が開き、一人の小僧が中の様子をうかがっている。一青(イーチン)である。

「藍生!你身体好吗?」(藍生!体は大丈夫?)と言って駆け寄って来た。こんな子供に心配をかけたくないので必死に起き上がる。

「啊,没关系。一青!和尚在哪里?」(ああ、大丈夫だよ。イーチン!和尚様はどこにいる?)

「请稍等一下。我去叫和尚。蓝染店来了。」(ちょっと待ってて。和尚さん呼んでくるね。藍染屋さんも来てるよ。)

藍染屋?ああ、そういえば、話に聞いた若旦那が藍染屋さんだったな。潜るのにも藍染の衣がいるって言っていたなぁ。いよいよ、潜ることになるんだな。よし、やるか!

 部屋に和尚が藍染屋を連れて来た。衣を仕立てるために採寸するのだ。藍染屋に先祖の話を聞くと、

「我在问祖先那件事。是真的呢。你潜入里面吗?做最好的衣服。」(先祖に話は聞いていました、本当だったのですね。あなたが潜るのですね?最高の衣を作ります。)

 話を聞くと、先祖の若旦那は、この先もし同じことが起きた時にもっといい衣を作ることができるよう、何回も試作品を作っていたようで、型紙が用意されているそうだ。あとは潜る人に合わせて作ればいいようにしてあったので、すぐに作り始めるそうだ。

 後は麺料理だけそろえば潜って取ってくる準備は完了だ。私にはそれを作ることのできる料理人に心当たりがある。和尚も同じだ。そう王さんの作る「呵呵の担々麺」だ。採寸が終わると早速二人で山を下り呵呵に向かった。私には確信があった。あの食べた後の幸福感、きっとあの中にはそういう善意、良心の塊、宝石があるに違いない。同じ料理人としても尊敬できるあの人以外にいないだろう。和尚にそのことを言うと、笑ってうなずいていた。

「王先生!」(王さん!)

dive42に続く・・・

 

 

 

Today's Schedule
2026.10.30 Friday