大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive38
若旦那も最初は風邪かなと思ったが、ちょっと様子が違った。近所の医者たちに見せたり、煎じ薬を飲ませたりしていたが、一向に良くなる気配がない。医者もさっぱりわからん、と匙を投げる始末。少し大きな町の医者にも相談したが同じ答えだった。そこで当時の和尚のところに相談に来たのだそうだ。その和尚はこの寺始まって以来の霊力、法力の高い人だったそうで、医者でもどうにもならないときに、町の者がよく相談していたのだそうだ。悪いものがついているなら祓ってほしいと相談したが、和尚が奥方を見た途端「私の手では祓えないかもしれん」と言ったそうだ。
「これはとりついているのではなく、何か悪意のあるものを食べたのではないかと思われる。そんなものに心当たりはないか?」
と言われ若旦那は、はっと思った。もしやあの時奥方に食べさせた麺料理が、と。
「これは優しい者、霊力を持つ者に強く作用する。悪意、邪心の結晶のようなものを食べたときにおこる症状だと思う。私も以前聞いたことがあり、治し方を教わった。しかし私ではできなかった。」
「どうしたらいいのですか。」
「よく聞け。悪意、邪心の結晶ならば逆に善意、良心の結晶を食べさせるのじゃ。しかしこれを結晶化させるには、霊力を持つものが心を込めて作らなければならぬ。しかし霊力を持っていればいいわけではない。「思い」なのだ。その域に達した料理人だけが慈愛に満ちた思いを結晶化できるのだ。そしてその料理の中に霊力を持って潜り、取りに行かねばならぬ。」
「潜る?潜るってどういうことですか、和尚。」
「結晶化した石を料理の中に入って取りに行くのだよ。術を使って小さくなるのだ。術だけなら私の法力で何とかできるのだが。そういう料理を作ることのできる者が・・・それから衣を。」
「衣?」
「そう、藍で染め上げた衣だけがこの術に耐え得るのだ。そなたわしに衣を作ってはくれぬか。」
「そんなことでよければ、あとは霊力を持った料理人ですね。心当たりがあります。では、さっそく。」
そういうと都に向かって走って行ってしまったそうだ。そう、都ではやっているあの店の料理人を連れてきたのである。若旦那が理由を話し懇願して来てもらったそうだ。そして、さっそく料理を作ってもらった。いきなり光り輝いて、小さくなって飛び込んだ和尚の術で取り出した青い宝石。それを砕いて奥方に与えた。するとみるみる顔色がよくなり目を覚ましたそうだ。若旦那はすぐに麺料理屋を閉めさせ二度とその行商人を店に入れなかった。それ以来この寺の衣はすべて若旦那の店から寄付されるようになったそうだ。
dive39に続く・・・

