大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive37
和尚が棚から取り出してきたのは、ほこりをかぶっているわけではないのだが、なんだか粉っぽいというのか、虫に食われたのか、ちょっと触りたくないなと思わせる1冊だった。和尚も外ではらってから持ってきたのだが、本人がくしゃみをしている。これを見て私は、ジャッキーチェンの映画「拳精」を思い出す。寺で行方知れずになった「五獣拳」の秘伝書から五獣拳の妖精が出てきて功夫を教えてくれるという物語で、その秘伝書がほこりまみれだったのをオーバーラップさせ、あの本から何か出てくるんじゃないかと期待していた。あの映画、実は本人は気に入ってないらしいが、「蛇拳」以来のジャッキーフィーバーでジャッキーフリークの私たち世代にとってはどの映画もすべていい思い出である。そんなことを考えてぼーっと本を見ている私に、お前もくしゃみをしろと言わんばかりに目の前で本を振ってきた。和尚が笑って見ている。思わず鶴拳のポーズ取ってしまった。今度は無視して本を開いてきた。高々と上げた両手が寂しい・・・・和尚め・・・
「藍生、不是开玩笑的时候。」(藍生、ふざけている場合ではないぞ。)
そういいながら広げたページを読み始めた。
どうやら過去にも同じようなことが起こっていたらしい。それはこんな話だった。
何代も前の和尚の時代の話だそうだ。街道に三代続く、たいそう繁盛していた染物屋があった。その店の若旦那が、ある行商人にもうけ話を持ち掛けられた。
「若旦那、都ではやりの麺料理があるのですが、この街道にその料理屋を出してみてはどうですか。いえ、なに、料理人たちは私のほうで用意いたしますので、旦那は店を用意してもらえないでしょうか。儲かりますよ。」
若旦那は料理が大変好きで、いつも奥方が作ってくれる料理を食べて幸せな気分になるのが好きだった。外で食べるときも気に入った料理人のいるところにしか行かなかった。
「本当かい、それは。しかし料理屋とはおいしく、心を込めて作れる料理人がつくらなければ決して繁盛などしないよ。そんな料理人は、そうそういないものだよ。」
「そこはそれ、お任せくだされば結構ですよ。私も相応、出資するので損をするわけにはまいりません。私はその店に人と食材を下ろさせていただければよろしいので。なんでしたら、都の店を見に行っていただければ。」
ならばと、一度その店を見に行った。なるほどたいそう繁盛していた。食べてみると本当においしかった。なんともいえぬほっこり感に包まれ幸せな気分になった。そこで若旦那は、その行商人の話に乗った。そして街道に大きな店を作った。行商人は料理人と一緒に接客をする若い女中たちもつれてきた。開店した店は、行商人の言うとおりに繁盛した。しかし、最初は町の者も何度か足を運んでいたが、そのうち、よそからうわさを聞いてくるものばかりになってしまった。それでも儲かってはいたので、そんなに気にしてはいなかった。若旦那は、なぜ町の人が来なくなってしまったのか気になり、ちょっと一杯食べてみた。都で食べたものとは、ちょっと違った。なんだろう、入っているもの、雰囲気は似ているのだけど。いつも奥方がくれる気分にも、あの都の店の一杯を食べた時のような感じにもならなかった。奥方にも一緒に食べてもらったが、うーーん、と首をかしげるばかりだった。そんなある日のこと、いつも元気だった奥方が、気分が悪いと店に出れなくなった。ふらふらする日が数日続きついには、寝込んでしまった。
dive37に続く・・・

