大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-07-20 13:58:00

dive36

 次の日から寺に住み込むように勧められ、王さんに相談すると快諾してくれた。1日のスケジュールはこうだ。朝4時起床、修行僧たちと一緒に掃除、読経、朝食、功夫、昼前には山を下り王さんの手伝いで呵呵に。お昼の忙しい時間を過ぎると、また寺にのぼりようやく時渡りの術の修練に。いくら朝から晩まで立ちっぱなしの調理師という仕事をしていたとはいえ、おじさんの体には少々きつい。山の上り下りだけでも結構な運動で息が上がり、功夫の時なんて何年かぶりに部活に入ったようでついていけない。孤児だとかいろんな理由でここにいる小僧たちにも、笑われてしまっている。その中の一人で一青(イーチン)という男の子が、いろいろ教えてくれた。お礼に時折下の町でお菓子を内緒で買ってきてあげた。そのせいで次第に小僧たちの人気者になった。2,3週間が経って、だいぶ体も慣れてきたころ、一軒新しい麺料理屋が開店した。麺料理屋にしては割と大きめな店で、店員も若い女の子がたくさんいた。にぎやかな街道の一等地に出来たその店はオープンしてすぐに繁盛店になった。王さんの店も今まで流行っていたが、すこし客足が遠のいた。山へ帰る途中にちょっとその店の様子を見に行くと、昼飯時を過ぎてもまだ行列を作っていた。すごいなー、きっとすごくおいしいんだろうなーと思っていると、食べ終わって帰る人たちが出てきた。その人たちを見ていると何か違和感を感じた。今まで厨房の中だけで働いてきた私は、お店でお客さんたちを見ることはなかった。しかし、ここへきて、王さんの店で働くようになってからお客さんたちを見、話し、感じるようになった。そして自分の作ったもので笑顔になって、また元気になっていく人たちを見ると、私もまたやる気になるものだ。それがなんとも、店から出てくる人たちから感じられぬのだ。中には笑っている人もいるのだけれど、なんか違う。妙なものを感じたまま寺に帰り、ことの始終を和尚に話した。すると

「也许是吧。不要太靠近那家店」(さもありなん、その店にはあまり近づかないほうがよい。)

というだけだった。

そういえば、中華街でも休憩中に外へでると観光バスで来ていたお客さんたちが、今しがたどこかのお店で食べて、くつろいで出てきたはずなのだが、疲れているというか、楽しそうじゃないのである。私は、食べることが大好きで、うちで食べるとき、外で食べるとき、そのたびに楽しいというか喜びを感じる。ましてや作ることも好きなので、食事の時間は至福の時である。そんな私からしてみると、楽しくなかったのかな、美味しくなかったのかなと思うと可哀そうになる。そんなものかな、と思ってあまり深くは考えなかった。

 それから2週間ぐらいたったある日、寺に町の者が相談に来た。

「和尚大人,女儿可能被什么缠住了。请帮帮我。」(和尚様、娘が何かにとりつかれたようで、助けてください。」

 聞くと、その娘は今まで元気だったのに、最近急にめまいがしだし起きれなくなって、目を覚まさなくなったそうだ。医者にも散々見せたがわからないと言われたと。困り果てたこの人は、最後の頼みの綱として和尚に相談に来たということらしい。

「果然变成这样了吗?正如那本书上写的那样。」(やはりこうなってしまったか。あの書物に書いてあった通りだ。)

ひとしきり悩むとその者に約束をし帰した。そして私に

「藍生、请帮忙。」(藍生、手伝ってください。)

と言って、書物をひろげた。

dive37に続く・・・

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