大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive32
ぽつぽつと平屋の民家が続いていたが、歩いてついていく間に、町の中心部に入っていき2,3階建てぐらいの建物が増えてきた。昨日はまったくわからなかったが結構大きな町だったんだ。その中にひときわ目立つ通りがあった。山から下りてくる道で、そのまま街道に突き当たる細めの道なのだが両脇にびっしりと小さなお店が続いている。そう、いわゆる表参道である。そこを登っていくと寺があるようだ。奥に立派な山門が見える。角の石柱には青龍寺参道と彫ってある。少し立ち止まって見てみると、土産物、団子屋、そば屋、お供え物屋、などが所狭しと立ち並び、参拝客でにぎわっている。その中でも目立つのが藍染め物を売るお店だ。点々とあるその染物屋が参道に藍色のアクセントになっていて、何とも美しく見える。そしてここの名産が藍染めであることを容易に悟らせる。ほぉーーと感心していると、男が早く来いと腕を引っ張て行く。先ほどから気になっていたが、すれ違う者が皆じろじろとこちらを見てくる。そりゃあそうだ、こんな格好してるやついないもんな。150年後の未来人だもんな。街道を進み建物を5,6軒過ぎたところに平屋のそば屋があった。その扉を開け男が入っていく。なんとなくしか覚えていないが、確かに昨日この店を見たところで水をもらった。ここで倒れてあの人に助けてもらったのかと、ようやく記憶がつながった。しかしよくこんな得体のしれないやつたすけてくれたなぁ。看板を見てみるとみかん色の下地に「担々麺、呵呵」と書いてあった。中に入ってみるとテーブルが4つのこじんまりとしたお店だった。担々麺とは「担いで運んでくる出前のそば」のことで、私の居た時代、平成になったばかりの日本で見るものとはだいぶ違う。茹でた麺の上にゴマやナッツなどと炒めた肉そぼろ、ネギ、辛いたれがかけてあるだけの物で本当にシンプルなものだ。
男は厨房に入り湯を沸かしていた。いつも見ていることなのに何か新鮮に映る。私たちの大先輩にあたる人たちがこの時代に作ったものが、私の時代につながっているんだ。食文化の歴史をこの目で見れるなんて、なんてことだ、こんなにうれしいことはない。昨日から今までタイムスリップしたことにどう対処したらいいかとか、嫁さん心配してるだろうなぁとか、など悲観的なことばかり考えていたが、今の俺は、調理師学校に入学し、調理の世界に初めて入った時のようにわくわくしている。私は、大きく言えば作ることが好き。食べることも好き。だから調理が好き。なんとも単純だが、毎日調理をしていても、その楽しさが尽きないからこの仕事を選んだ。他の調理師たちがみなこうなのかは知らないが、たまに同じような人と一緒に一つの料理をアイデアを出し合いながら作っているとこの上なく楽しい。今まであちこちの店で働いて何回かそういうことがあったが、ジャズのセッションのようなものだと言えばわかってくれるだろうか。相手の提案に、そう来たかと、そしてこれならどうよと返し、最後は一緒に『それ、いいねーーー』ってな感じで終わる。わかってもらえるだろうか。そして先輩たちから教わったものをかみ砕き、吸収し、自分たちなりに再構築していく。食材、調味料、調理法を無限に組み合わせ、科学の実験のように新しいものを作り出していく。そう、料理とは、調理とは錬金術である。150年も離れた文化を、料理の元始見ていると思うと震えてしまう。男が、麺をゆで始めた。日本のよくあるラーメンの麺で言えば平打ち縮れ麺であろうか。結構長めにゆでている。 網であげると椀に入れたれをかけ肉そぼろと胡麻やナッツ薬味をかける。そうだ、これが担々麺だ。器を2つ持ってこちらのテーブルに置く。箸をわたされ
「请吃」(食べなさい)
「謝謝」(ありがとうございます)
私の信条、その人、その土地の人を知りたいなら、その土地の物を食べろ。早速食べてみる。うまい。なんだろう。香辛料の匂いに濃厚なたれの味、胡麻やナッツがアクセントになってもちもちの麺に絡む。これが担々麺かぁ。いやーこれ、完成されてるなー。
そう思いながら食べていると、美味しくて、楽しくてにやにやしていた。
「这个好吃吗」(おいしいですか)
「非常美味 很开心」(すごくおいしいです 幸せです)
「哈哈哈哈、謝謝」(はははは、ありがとう)
なんかうれしくてつい言ってしまった。
「我想帮你的商店」(私はあなたのお店を手伝いたいです)
dive33に続く・・・

