大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive21
昨日のうちに準備しておいた荷物を1階に下ろし、さくらに黄さんたちが心配だからお世話になった中国の村に行ってくることを話した。どう繕っても話のつじつまが合わなくなり嘘だとばれてしまうので、半分本当で半分うその話を昨日ジミーと作っておいた。さくらの知ってる黄さんなら世話になったのだから文句も出ない。何回も会っている紅美のことも聞いてくると言えば俺の心配より二人の方が心配になるだろう。しかしやっぱり鋭いことを言ってきた。
「黄さんも紅美さんも心配だけど・・お兄ちゃん何でそんなに荷物が多いの?それに1週間って長くない?」
「ん?あーこれ、これは前に向こうでかわいがってた子達にお土産だよ。あー、それからなんか困ったらジミーに相談するんだぞ。まあ中国でもlineは通じるしメールもできる。いつでも連絡取れるんだからそんなに心配すんな。」
ピンポーン!
「おーい!藍準備できたか?」
「さくら、じゃあ、行ってくるね!」
「お兄ちゃん、これ、持って行って」
そう言って小さな手作りの人形を手渡した。桜色の小さな女の子のマスコットは剣道着を着て竹刀を持っていた。
「おい、飛行機の時間に遅れるぞ、さくらちゃんあとでまた来るね!」
藍は逃げるように、でも名残惜しく車に乗る。ジミーがさくらに何か言っている。運転席にジミーが乗り、車を出す。振り返らない様に我慢している姿を横目に見ながら
「会社はどうだった。何か言ってきたか?社長は?」
「ああ、プレゼンを見に来たのはブラストンの奴らだった。社長も来たけど俺には関心なさそうだった。休みを普通にくれたから別に何も感づいてないようだ。それよりお前のほうにはなんか来たか?」
「いや、コネクトシステムのことでちょっと聞かれたくらいかな。スーツの管理システムのことは深くは聞いてこなかったかなー。まあ俺に直接聞いてくるってよりは、灰田課長から上司に連絡が入って間接的に聞かれる程度だから・・・」
「そうか、じゃあまだ俺たちに分があるな。あと黄さんと紅美だな。スーツのこともあるし、直接成都に飛行機で行くと怪しまれそうだから一度香港に行って鉄道で四川に向かうことにしたよ。もし何かあったらサポート頼む。」
「ああ、でもそっちには俺の代わりにキッドがいるからな。普段はイヤホンをしておけばBluetoothでつながるし、Wi-Fi環境下でアップデートもできるし、何かあればこちらにも送信されるようになっている。心配ないよ。」
さくらのことは心配だけどジミーもついているし、師範の会社である白馬化学繊維工業に勤めていて、何かあったら師範やおじさんが守ってくれる。あの会社には師範が剣道部を作っていて県内の強いやつをスカウトしては道場で戦わせている。というより自分が戦いたいようだ。さくらはその中でもまれてどんどん強くなっているらしい。最近、切れというかスピードが増してるというか。師範に聞くと先の先だとか先の後だとか言ってたな。最近居合とかもやってるらしい。そんな奴守るっていうか・・・・
空港についてチェックインを済ませ、紅美に電話をしてみる。相変わらずつながらない。黄さんもダメだ。香港までは大丈夫だけどそのあとはどうしよかと考えていた。とりあえず深圳(しんせん)まで行ってからだ。
飛行機に乗ると緊張が少しほどけた。何かに狙われてる感が少し緩んだからだろうか。窓の外を見ていると隣の人がしゃべりかけてきた。
「一人旅ですか?」
俺より少し年上かな、ちょっと中国人なまりというかイントネーションが気になった。細めの体にフィットしたタイプの濃紺スーツに黄色いスカーフがお姉さん感を増していた。
「はあ、旅ってほどではないんですけど、ちょっと知り合いに会いに。」
「そうなんですか、私は実家に帰るだけなんですけど。深圳まで。ちょっと香港によってから。」
「深圳ってことはやっぱり広東料理ですね、ぼく好きですよ。点心とかも。腸粉とか大好きです。」
「本当ですか?あなたは日本人ですか?初めてです。腸粉好きっていう人。おいしいですよね。朝食によく食べますよ。どちらまで行くんですか。」
「とりあえず香港によってから深圳に」
「へー、じゃあ一緒ですね。よかったら腸粉のおいしいところ教えますよ。腸粉が好きってことは米粉も好きよね?」
「はい、はい、はい好きです。大好きです。いいですねー、もしかして生ビーフンですか?ぜひ教えてください。いやーやっぱり地元の人の情報はいいですよね。でも、香港で用事があるんですよね?」
「たいした用事ではないので1日で終わります。明日には深圳に行けますよ。明日一緒に行きますか。」
「楽しみが増えました。よろしくお願いします。僕は守川藍と言います。チムサーチョイのウィンザーホテルにいます。何かあったら連絡ください。」
「私は朱桜綾(シュウ ヨウリン)と言います。楽しみにしていてください。」
そう言って連絡先を交換した。
dive22に続く・・・

