大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-05-10 14:20:03

dive17

「内密に進めていた例のスーツ、明日には試作機ができるようです。あれができればまた石に一歩ちかづけますね。あれさえあれば人の不安、猜疑心、妬み、病などを誘発し薬も売れ、兵器も売れうちの会社はぼろもうけ。」

「おい灰田あんまりそう急ぐな、すでにあの四川の村は焼き払った。これであの石の秘密を知るものはもういないのだから。しかしあの村長ときたら最後まで口を割らなかったな。まあいい、こちらにもそれなりに手はある。これでスーツができればもうあの小僧にも用はない。何か理由をつけて首にしてしまえ。」

この声は黒田社長か?

「製造データなどはもうコピーしておきました。いやぁ、社長もやることが早いなぁ。スーツができそうだと言ったらすぐに村を襲っちゃうんだもんな。あとはあの僧侶の術さえあれば・・・まあ明日が楽しみだ。しかしまさかこの会社があの軍事と製薬の『ブラストン』とつながっているとはね・・・」

「あれは祖父が作った親父の会社だ。だが、いずれは俺がすべてをいただく。親父のやり方ではまだなまぬるい。ただし戦争なんか起こさせない。生産性が落ちるからな。ぬるま湯のような世界であの石を使い、穏やかな笑顔で優しく親切にきりきりと搾り取ってやる。病の前にはどんな金持ちでも、どんなに頭がいいやつでも、どんなに強いやつでも平等に無力だ。」

「社長を見ているとほんとに思いますよ。『悪魔は善人の顔をしてやってくる』ってやつをね。」

(ちょっと待てよ。紅美が言っていた敵ってうちの会社?なに、おれ敵のためにスーツ作っちゃったんじゃないの。四川の村を焼いたって!どうなってんだ。紅美は無事なのか。村長は、紅雷は。もしかしてさくらの病気もこいつらのせいなのか。それより今はここを出なきゃ。どうすりゃいいんだ、俺。)

来た道をそろそろと引き換えし自分の研究室に戻るとパソコンの履歴をすぐに調べた。まさに俺が出勤する直前に開けた跡がある。監視カメラを見るとロッカーも開けている映像が残っていた。何かあからさますぎないか。でも石のことも知ってるってことは、村か寺の関係者がかかわっているってことなのか。どうすればいい。でも幸いなことにもう一つのスーツの機能、人工知能のことはここには置いてない。もう会社用のスーツのことは仕方がない。対策を考えなきゃ。まずここはこのままにしておかないとかえって怪しまれる。このまま帰ろう。

 帰る途中に紅美に」電話をしたが何度かけてもつながらない。黄さんにもかけたがつながらない。こうなったらしょうがない、俺の味方といえばこいつしかいない。今までできるだけ言わないできたがこんなに近くに敵がいたんだから、というか敵の中にいたんだからしょうがない。あいつにも事態を知ってもらっておかないと。さくらにはどうしよう。えーい、それもあいつに相談しよう。もう早く出ろよ。

「おー、藍さっきできたばかりで、今電話しようとしたとこだったよ。もう家に着いたか?」

「おおー。お前ってホント頼りになるな。もうつくからお前もすぐに来てくれ。大事な話があるんだ。お前にも、さくらにも関係のある話だ。」

「なんか怖いな、まあ急いでいくよ。」

興奮する俺に驚いているようだが、話を聞いたらそれどころじゃなくなることだろう。きっと紅美も許してくれると信じよう。ご先祖たち俺たちにご加護を。

 家に着くとさくらがご飯を作っていた。ジミーも来ることを伝えると予想していたようで、慌てる様子もなく冷蔵庫から食材を出している。話は食べてからじゃないと、おそらく食欲がなくなってこれからのことも考えられんだろう。今まで打ち明けようかどうか何度も考えてきたが、話がこんなに大きな事態になるだなんて、もう俺だけの問題じゃなくなった。止めなきゃ、さくらみたいな子がたくさん出てしまう。これかあの村長の言っていた店主が警告していた話って。でも『黒石化学』だけじゃなく『ブラストン』だって、あんな世界的な軍需産業&製薬会社が敵だなんて。でかすぎるでしょ話が。

「お兄ちゃん?何深刻な顔してんの。ジミー来るなら着替えてきたら。もうご飯できるよ。」

「うんそうだな。」

ぼんやりと答えたその声はさくらの背中越しに届いたのだろうか。様子のおかしい兄に振り向くさくら。じっとさくらの顔を見つめ、やっと病気から解放されて楽しく生活できるようになったのにこんなことに巻き込んでいいのかという葛藤。武道が好きで正義感の強いさくらのこと、事情を話せば一緒に戦うというかもしれない。でも兄として、母を早くになくして幼いころから気丈に頑張っている妹をこれ以上辛い目に合わせたくない。早くに結婚していい旦那さんと幸せに暮らしてほしい。こんなに普通に暮らしている世界が俺の一言で一気に闇の世界とつながってしまう。何度も言葉を飲み呆然と立っている兄を見てさくらはなにかをかんじとったようで手を止めて、

「大事な話?があるの?」

「さくら・・・おまえ・・今困ったことないか、幸せか」

「うん。幸せだよ。急になによ。うーん、困ったことか・・・兄がずっと何か隠し事をしてることかな。」

ピンポーン~

「あ!ジミーだ。」

そういってはぐらかし玄関に行くとジミーを迎えた。泣きそうな目をしている俺を見て入るのをためらっているジミーを引っ張りあげた。

「さあ、とりあえず食べよう。いただきます。」

まずこいつに話してからだ。さくらに話すかどうかはそれからだ。怖い顔をして食べる間中ジミーを見ているものだからなかなか食も進まないようだ。

「お兄ちゃん、それじゃジミーが食べれないよ。もう、かわいそうに。」

「もう食べたよな、じゃあ俺の部屋に行こう。」

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