大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive3
昔々、その村長の何代も前の御先祖の時代にその時の村長の娘が奇妙な病にかかった。医者に診せたが一向に良くならない。煎じ薬をいろいろ飲ませたが日に日に弱っていき目眩をおこし倒れることもしばしばになっていったという。「これは、もう時間の問題じゃ、助からん。」という医者を見限り、あきらめきれない村長は村人を四方の大きな町に行かせ、片っ端から名のある医者に症状を話し何か治療法がないか尋ね廻らせた。そして、村長は,伝手をたどって都に行き、大金をはたいて御天医にまで尋ねたのだが、いい返事は返って来なかった。それどころか占星術師、風水師、道師、などが大金のうわさを聞いて群がり「祈祷してやる」、「家の向きを変えろ」、「先祖の墓を立て直せ」と押しかけるのを追い返すのでほとほと疲れてしまった。あきらめと疲れでとぼとぼ村へ帰る道すがら立ち寄った山間の町で流行っていた料理屋に目がいった。ほんわかした雰囲気と何とも言えぬ匂いに落ち込んでいた気持ちを元気づけられるようだった。みかん色の看板に笑顔のよく似合うぽっちゃりした店主の風貌が食欲をそそる。だいぶ日も暮れてきて店も閉める間際に入ったので村長が最後の客だった。人気の麺料理を待っている間に接客をしていた女将さんにため息を吐くようにポツリポツリと今までのいきさつを話した。料理を運び終えると女将さんが奥に戻って店主と何やら話し込んでいた。深刻そうな顔が気にはなったがそれよりも食べたことがないうまさの麺料理の虜になり、箸が止まらず一気に食べてしまった。空腹であったこともその理由の一つだろうが、濃厚な胡麻のスープにシャキシャキの野菜、何とも言えぬ香りのラー油にうまみたっぷりの挽肉。「こんなうまい料理は都にもなかった。」あまりのうまさに呆けて娘のことを忘れそうになったその時、奥から店主が現れ、女将さんが外の通りを見回し誰もいないことを確認して扉を閉め鍵をかけた。店に閉じ込められ何が起こるのかと一瞬たじろいだが、満腹感と治療法が見つからない失望感でどうでもよくなっていた。近づいた店主が目の前に座りおかしなことを話し出した。娘の病状を聞かれたあと、何かを決意した顔をして
「誰にも言わないとお前のその娘に誓えるか」
と一言言った。何だかわからないがすがる思いで大きく首を縦に振った。すると店主は何も言わずに奥に戻りまた先ほどの麺料理を作った。そして目の覚めるような青い衣に着替え料理を持って出てきた。使い込まれた衣の背中には『潜航厨師』と書いてあった。そしてどんぶりを机の上に置いたかと思ったその瞬間、店主が何かをぶつぶつ唱え始め手で印を結んだと思うと、閃光とともにどんぶりに飛び込んだのだ。何が起こってるのかもう訳がわからなくなり呆然としている村長が腰を抜かすのと同じ頃に店主がどんぶりから飛び出てきた。
大急ぎで女将さんが水をかけ一生懸命主人の体を布で拭いている。所々火傷を負っているようで赤くはれ上がっていた。
「なんてことを!大丈夫ですか?」
と聞く村長に店主は拳を突き出し開いて見せた。そこには新緑の森に流れる清らかな小川のきらめきのような青緑に輝く見たこともない宝石があった。
dive4に続く・・・

