大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-04-03 18:25:00

Ra-men Diver (らーめんダイバー) dive-1

 俺は、黒石化学という会社で耐熱繊維を研究している一人の化学者だ。いや、だった、が正しいか。このての研究においては、世界でもトップクラスの会社である。その中でもあるプロジェクトを任せられていて、近年、大いに成果を上げていた。軍事にも応用できるくらいの代物なので、デリケートなところだが。
 ある理由があってこの研究を続けてきた。それは、俺が、17歳になって間もない梅雨入り間近の6月のことだった。当時中学生になったばかりの13歳だった妹が、不治の病に侵されていると言われたのがきっかけだった。これが青天の霹靂というのだろうか、田舎でのほほんと暮らしていた17歳の俺には、目の前の白衣を着たおっさんが、何を言ってるのかよくわからなかった。妹はいつもと変りなく、毎日元気に学校に行き、好きな剣道をやるために部活だけでなく、道場にも通うぐらいだったのに、突然そんなことを言われても、(アニメかよ)と思うぐらいだった。
 しかし、その日を境に妹は時折目まいがすると言い出し、学校も休みがちになり、道場にも通うことができなくなった。医者のすすめで大学病院に入院させたが、症状を遅らせるのがやっとだった。医者に聞くと病名すら特定することができないらしい。対処療法で症状を抑えるのがやっとということだった。その医者に紹介してもらい、他の有名な医者たちにも症状を伝え、治療方法を探したが現代最新医学をもってしても胸のつかえをとってくれる答えは返ってこなかった。14歳の時に両親亡くしていた俺は、妹を守らなくてはと必死だった。医者に希望を持てなくなった俺は、オカルトに走った。神社、寺、教会、ブードゥー、心霊手術、噂を聞いたら何でも行った。変な水も飲ませた。何だか知らない布でバリアーも張った。あきらめかけていたころ、ある情報を入手した。またか、と思いながら飛びついたその話とは、およそ眉唾物であろう伝説の秘薬の話だった。
それは、中国四川省に伝わる秘薬で、ある山奥の集落の村長の李家に代々受け継がれるものだ。見たこともない青い宝石を削り薬として飲ませると、たちどころに治ったという。しかもその薬で助かった少女は、妹とそっくりな症状だったという。胡散臭い話だとは判っていたけど、今はそれしか頼れるところがない。必死に叔父に頼み込み、中国に飛んだ。

 今も成都から少し離れた山間の村に、ひっそりと暮らすその村長の一族は、人情に厚く礼節を第一にする、と情報を流してくれた人物から聞いていた。初めて行った時には「知らない」と追い返された。態度が悪かったのだろうか、と身なりを整え行った二回目には、村長はいなかった。もうやめようかと思いながらもすがるところがほかにない俺はしつこいと思われてもしょうがないとやけになりながら三回目も村中を回った。もう帰ろうかと思いながら途方に暮れていた俺の様子を遠くで見ていた村長が自宅の奥の間に通してくれた。そして優しい香りのする温かいお茶をそろそろと注ぎながら俺の話をまっすぐ俺の目を見つめながら真剣に聞いてくれた。俺は堰を切ったように今までのいきさつを話した。片言の中国語に筆談、身振り手振りと汗だくになって説明する俺を見て奥で覗いていた娘さんが微笑みながらタオルを渡してくれた。村長にも何とか伝わったのか、一休みするよう言ってくれた。

「話は大体わっかた。少し時間をくれ。知り合いに聞いてきてやる。今日はもう遅いからうちに泊まると良い。おい、紅美(ホンメイ)食事の用意をしなさい。あとこの若者に部屋を用意してやりなさい。」

dive2に続く・・・

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