大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2025-06-02 12:12:00

dive108

退魔術の修行を始めて早3か月。毎日、さまざまな仏、印、真言を学び、呼吸法を体得する。まだ良く解らないが、呼吸をするということは自然界にある力の源を体内に取り込み、へその下にある丹田という貯蔵庫に溜め込み、それを体中に巡らせるということだと円信兄は言う。解らないけど、あの時姉さんが外界から取り込もうとしていたものを見ていたのを思い出し、想像しながら息を吸ってみる。そして、肺を通り力が丹田のたまり渦を巻く、それが光の玉となって背骨を通り頭へ。目、耳、鼻、口、のどを通って両腕に。腕の外側を指先まで行って、内側を帰って行き胸に。みぞおちをおりて、太もも、ふくらはぎ、足の指先までいったらまた丹田へと戻す。その間、息を止めて行い丹田へと戻したら息を吐く。そしてまた新しい力の源を取り込んでいく。この繰り返しを、普段からできるようにする。すると自ずと呼吸自体をゆっくり大きくするようになってくる。そして常に丹田あたりに意識を集中、力を込めていられるようになってきた。最初の頃は気にしていなかったが、最近功夫の時に身体の軸が揺れなくなってきた。特に鉄山靠(背中で相手に向かって体当たりをする八極拳の技)をやっても押し負けなくなってきた。円信兄に言うと、身体の重心を意識する場所によって動きも変わるのだという。今までは目で見ていることに意識を集中していたので頭の方に重心が行っていた。だから足元をすくわれやすかったり、腕を取られるとよろけてしまっていた。だがどうだ、今は横から打ち込まれても丹田を軸に上半身だけで受け流し、柳のように返すことができる。そして丹田から足へ、そして大地へ根を張るように意識をすると押されてもびくともしなくなった。なんだこりゃ、呼吸法一つでこんなに変わるのか?すごい。でも、これ退魔術と関係あるのか?そう思って、円信兄に聞いてみた。

「そうだな。最近お前と功夫の組み手をしていると大分変わってきたのがわかるよ。お前なぜあの明王たちの像が筋肉隆々なのかわかるか?その法力だけでなく智力、体力すべてを鍛え、初めて魔と戦えるようになるのだ。そしてそれはすべてつながっております、ひとつ学ぶと次へとなっておる。お前はその1つ目の階段をのぼったところなのだよ。」

「そうか、そういうことだったのか。大分、分かってきたぞ。円信兄、僕結構強くなったんじゃない?」

「あはははは」

「えっ!あれ?」

円信兄が足元をなでるようにはらうと、ふわっと身体が浮いて投げ飛ばされていた。

「慢心は修行の妨げになる。気をつけなさい。」

 その時思った。前の僕だったら、円信兄のすごさが解らなかったが、前の僕と今の僕との差を解るようになった僕には、円信兄との差がはるかに遠いことが解る。しかし道場の白龍師範の強さと何かが違う。まるですべてを見通す仏様のような強さに感じた。

その日から僕はこの修行のことだけに集中するようになった。ようやく道の一歩目を歩き出した気がした。

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