大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive107
次の日、朝から寺の雑用をこなしていると円信兄が僕を呼んだ。昨日のこともあって、僕は内なる蛇に気づかれたのではないかとドキドキしていた。
「行徳、昨日はどうだった?ああいうのは初めてだろうから心配していたが、どうやらお前は年の割に肝が据わっているようだな。」
「そ、そんなことはないけど、今までいろいろあったから。」
「そうだな、お前の姉さんの力もそうだけど、俺たちの生きている世界には、肉体を持っている俺たちみたいな生き物とそうではなく意識と力の混合体のようなものも存在するんだ。俺たちは仏の力を借りてそれを見たり、時には改心させ成仏させたり、昨日のように滅することもあるんだ。そのものの力が善か悪か、精霊と呼ばれるもの、魔物とよばれるものにはそのどちらも存在するのだ。善悪の判断などは言ってみればこちら側の都合なのだ。大いなる自然に宿る精霊たちには人間の理などどうでも良いことであろう。まだ、少し難しいかな?」
「そんなことない、わかる、わかる気がする。昨日のあの家はどうなるの?」
「そうだな、あの旦那さんは落ち着くまで少し時間がかかるだろう。だが娘の方は身体の傷さえ治れば立ち直りは早いと思うよ。後妻は、もうおっかなくて出ていったそうだしな。」
「いろんなものの気持ちや思いが力になるんだね。それが良い方に行ったり、悪い方に行ったり。」
「おお、そこに気がついたか?やはりお前は見どころがあるな。そこでなんだが、行徳、お前、退魔の修行をしてみる気はないか?簡単に修得できるわけではないが、お前には素質があると思う。」
「本当ですか?やります。やってみたいです。円心兄お願いします。」
食いかかるように返事をしたものだから、円信兄のほうが驚いていた。渡りに船だ。ここからだ。姉さんを、父さん、母さんを救うには、守るには武の力だけではだめだ。これを極めれば和尚の術もいずれは。そしてその先へ。だが、このとき僕は分かっていなかった。昨日得た、あの禍々しい力とこれから習う力が相反するものだということを。

