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2017.08.15 (Tue)  07:01

奉納踊の真髄

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今年の七夕踊は、台風5号の影響により奉納日の6日朝8時から,JA日置市来支店の倉庫で行われた太鼓踊りをもって,今年の踊を終了としました。

 

8月6日,県下各地で行われる予定だった各種イベントは,台風接近を前に中止や延期が相次ぎました。しかし,七夕踊は,イベントではありません。奉納踊りです。当日の天気は「神のみぞ知る」,保存会では「当日の朝の天候で判断する」として,奉納に向けての準備は粛々と進めることとしました。

 

奉納ですから,踊に用いる作り物や行列ものの道具類は、当然のこととして新調した物でなければなりません。それが神様に対する誠意です。奉納日前日の8月5日,台風が接近し時折雨や突風が吹く中,大里地区の集落では,集落民皆が力合わせて,鹿・虎・牛・鶴の作り物や大名行列・琉球王行列・薙刀行列の準備に大童でした。

 

天気予報が発達した現代だからこそ,台風接近を知りうるわけですが,昔は当然ながら分かりません。大里の先人達も雨風が強い中にあっても,踊り奉納に向けての準備は進めたことでしょう。結果として,今年の七夕踊は中止となりましたが,「新しいものを作って奉納します」の誠の気持ちを神様に表すことは出来ました。「奉納できようが出来まいが,準備は粛々と進める」これが,「神に捧げる踊り」奉納踊りの一番大切なところではないでしょうか。その姿勢を神様に見せただけでも,神様は満足されたのでは。

 

農協の倉庫での奉納が終わってから翌日にかけて,作り物を作った集落では,奉納に使われなかった真新しい作り物の解体作業に追われていました。牛を作った堀・平ノ木場集落では,「はよ(早く)牛を解体して,焼肉の準備じゃ」と冗談を飛ばしながらの解体だったとか。どの集落も,鹿刺し,珍品の虎の肉,鶴鍋の材料だと言いながらの解体作業だったことでしょう。

 

また,「作る」と言うことには,もう一つの大きな意味があります。それは,作り方を集落の郷中(ごうじゅう)が後輩に引き継ぐと言うことです。一年作り方を空ければ,作り方が分からなくなることがあり,毎年作ると言うことは,技術の伝承ということからも大きな意味があります。

 

そしてまた,作ることで集落全体の団結にも繋がります。今年,9年ぶりに牛を作った寺迫集落では,牛の作るにあたって「ああじゃ。こうじゃ」と大変盛り上がり,集落の結束が大いに強まったと言います。このことは,集落民の心を一つにするために,祭(文化)は,不可欠なものであることを示していると言えます。

IMG_0298.jpg(陳ヶ迫集落の方の力も借りながらの寺迫集落の牛つくりの様子)

IMG_0350.jpg(夕方には完成)

 

「農協の倉庫で太鼓踊りを奉納したのであれば,作り物・行列物も全て揃えれば良かったのに」の声もありましたが,これは「コロンブスの卵」と同じであり結果論です。しかし,今後天候の影響で奉納できない場合も,「農協の倉庫で奉納できる」の前例となりました。

 

奉納は中止になったとは言え,収穫の大きかった年でもありました。