県連からのお知らせ
専門家に訊(き)く:インボイス制度変更点や改正等 申告書作成の要点を伝授
「インボイス今後どうなるの?」「控除が増える?」「節税のコツを教えて…」——今年も確定申告の時期を迎え、目まぐるしく変わる税制に不安を感じる方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、税理士の斉藤共秀先生をお招きし、本年度の大きな改正点や多くの事業者が悩むポイントを伺いました。
本年度の主な改正について(控除)
職員
まずは今年の確定申告で押さえておくべき主な改正点を教えてください。
斉藤
最も大きいのは「基礎控除※」の引上げですね。これまで一律48万円だった控除が、収入に応じて多くの方が58~95万円に引き上げられます。基礎控除は所得に関係なく全員が対象となる制度なので、給与所得者も、事業者の方も等しく恩恵を受けられます。物価高の状況を踏まえ、「最低限の生活費部分には税をかけない」という方針をより明確にした改正といえます。
さらに、今後2年間は所得に応じて基礎控除の上乗せも予定されています。控除は所得税の計算の根幹にあるので、この変更は多くの人にとって実感しやすい減税になると思います。
※基礎控除……所得税額を計算する際に、所得から差し引かれる「所得控除」の一つで、原則としてすべての納税者が対象となります。控除額が増えると、所得税の減税に繋がります。
職員
条件がある控除とは異なり、全員に影響するというのが分かりやすいですね。
斉藤
そうですね。他にも、19〜22歳の子どもを対象とした特定親族特別控除の創設など、子育て世帯や消費者への支援といった方向性が見えます。まずは「基礎控除が上がる」という、大きな柱を押さえていただくのがよいでしょう。
インボイス制度の今後
本当のスタートは令和8年10月から
職員
インボイス制度は導入から時間が経ちましたが、「自分にどれほど影響するのか分からない」という声もまだ多いです。
斉藤
実は、まだ本格的に影響が出ているとは言えません。現在は経過措置により、インボイス未登録の事業者から仕入れても仕入税額控除が80%認められています。そのため、未登録者との取引は“実質2%の負担増”で済んでいる状態です。
交渉によっては「インボイス未登録を承知する代わりに2%の値下げ対応(お互いに痛み分け)」をする事で帳尻を合わせた取引もあるでしょう。
しかし令和8年10月からは控除率が50%となり、“実質5%負担”に増えます。
これが事業規模によっては大きな差を生みます。
例えば、年間仕入500万円の場合:
· 現在(2%):10万円
· 経過措置終了後(5%):25万円
→ 差額15万円
直接の利益に影響するため、小規模事業者には無視できない金額です。
職員
制度の内容も大事ですが、取引相手との認識がズレることのほうがトラブルにつながりそうですね。
斉藤
まさにその通りです。先ほどの2%値下げで対応した例だと、登録事業者からすると「制度上の負担増だから協力してほしい」という感覚ですが、未登録側からすると「私には関係ない改正なのに、急に2倍以上の値下げを要求された」という印象になります。丁寧な説明をしなければ単なる値下げ交渉と思われても仕方ありません。
制度が変われば取引コストも変わるので、その理解を共有することが非常に重要です。
インボイス取り下げは“12月17日がリミット”
職員
導入時話題になったので、とりあえず申請をしてはみたものの、自身の事業に合わず「インボイスをやめたい」という相談も増えていますが、注意点はありますか。
斉藤
あります。取り下げ期限は毎年12月17日前後に設定されています。この期限を過ぎると翌年1月1日に自動継続されてしまい、その年は取り下げができません。
12月末に相談をいただくことも多いのですが、その時点で手遅れなケースがほとんどです。検討する場合は、必ず早めに動いていただきたいですね。
節税の話(共済・iDeCo)
職員
次は、事業者の皆さんが特に気になる「節税」の話ですが、おすすめの制度はありますか?
斉藤
はい。小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)は、特に事業者に強くおすすめできる制度です。理由は単純で、どちらも掛金が全額所得控除となるため、積み立てながら大きな節税効果が得られるからです。
事業者は会社員のような退職金制度がありません。そのため、老後資金は“自分で作る”前提で考える必要があります。共済やiDeCoは、そのための柱となる制度ですね。
職員
受け取るときにも優遇があると聞きました。
斉藤
そうなんです。共済やiDeCoは受取時に「退職所得控除」や「公的年金等控除」が適用されるため、一般的な貯蓄よりも圧倒的に有利です。いわゆる「入口・出口の両方が優遇される」仕組みになっています。
例えば最大額で積み立てると、
· 共済:月7万円
· iDeCo:月6.8万円
→ 年165万円
これを20年続けると 3300万円 になります。
もちろん最大額である必要はありませんし、支払いが厳しいときは
· 共済は月1000円まで
· iDeCoは月5000円まで
減額できます。
無理のない範囲で続けるのがポイントです。
経費と家事按分の話
経費の基準は「事業に必要だったか」
職員
商工会でも「これは経費になりますか?」という相談が本当に多いです。
斉藤
経費判断の基本はとてもシンプルで、“その支出が「直接的に」事業に必要だったと説明できるか”という一点です。たとえ少額でも事業と無関係なら経費にはできませんし、高価なものでも必要性が説明できれば経費として認められます。
特に指摘を受けやすい交際費は、「事業に関連するもの」として説明できるように準備が必要です。飲食費であれば、同席した方の取引先名や個人名のメモや、贈答品であれば送り先をメモ等、説明できる準備をしておくことが大事です。
家事按分は「根拠」が必要
職員
そもそも「家事按分」とは何でしょうか?
斉藤
家事按分とは、事業とプライベート(家事)両方で使うものを、使用頻度で割り振る計算方法です。例えばお手元のスマートフォンを仕事でも個人でも利用していた場合、支払った費用を使用頻度によって「事業分」と「個人分」に割り振ります。経費となるのは「事業分」のみです。
職員
按分時のコツはありますか。曖昧な部分ですが…
斉藤
自宅兼事務所の場合、家賃・光熱費・通信費などの家事按分が発生しますが、割合は毎年の整合性も重要です。「家賃30%、電気40%、通信50%」など、一度決めた基準は理由がない限り毎年同じ割合を使うことで帳簿の信頼性が高まります。
決め方は各経費によって様々な方法が考えられますので、自身の事業に見合う方法により適用させましょう。
例えば、自宅兼事業所なのに100%事業経費と言うのは明らかにおかしいですね
領収書がないときの話
職員
経費にするための領収書についても相談が多く、「なくしてしまった」と言われることがよくあります。私もいつの間にか財布からなくなっている事が…。
斉藤
確かに多いですね。領収書がなくても、クレジットカードの明細や銀行振込の記録などで支払いが確認できれば、経費として認められる場合があります。
ただし現金払いの場合は証明が難しくなるため、最低でも
①いつ/②いくら/③誰に/④何のために
のメモに残すことが重要です。これで認められるかの保証はできませんが、説明できる材料があるかどうかで、税務署の判断が大きく変わります。
まとめ
斉藤
税制は複雑に見えますが、分からないままにしておくことが一番のリスクです。商工会、税理士、金融機関など相談先はたくさんありますので、気になる段階で早めに相談してほしいですね。
職員
確定申告期だけでなく、普段の小さな疑問でもぜひお気軽に商工会をご活用ください。
