コラム

2017-04-27 21:59:00

デンタルケアについて

本日はデンタルケアについてです。
私が普段使用しているものを中心に説明していきます。

 

皆さんはお家で何かケアを行っていますか?
動物の歯石は人間と比較しできるのが非常に早く、45日で歯石が形成されると言われています。
つまり歯石除去を行っても、その後何にもケアをしないとまた歯石がついてきてしまいます
一度歯石を取って綺麗になったので、長くきれいな状態を維持したいですよね。
ちなみに、目に見える歯石(縁上歯石)に比べ、歯周病の大きな原因である縁下歯石はできるのが遅いので、
少し歯石がついてきた=すぐに歯周病が悪化してきた!というわけではありません。
このため麻酔下でのスケーリングで縁下歯石を綺麗に取って、適切な処置をしておけば、歯石がついてきても歯周病が急速に進行するのを防ぐことができます。

逆に歯石がたっぷりついているのに表面の歯石だけ取ると、気がつかないうちに急速に歯周病が進行することもありますので注意が必要です。

「デンタルケア」って何をすればいいの?という方は多いと思います。

自分の3歳の子供にデンタルケアといえば何をするのが良いでしょうか?
答えは簡単
ブラッシング」ですね!

しかしもう一度考えてみましょう。
生まれてから一度も歯磨きをしたことがない、口を触られるのが嫌いな子供に突然歯ブラシを突っ込んでも嫌がりますよね?
しかも言葉が通じないとしたらなおさら!
「これをしないと痛くなるよ!」なんて脅しも通用しません。

このため無理に一気に行おうとせず、少しずつ歯ブラシに慣れさせていきましょう。
口を触られるのが嫌いになってしまったら元も子もありません。
焦らずゆっくり、嫌がったらやめる、できたら大げさに褒める!これが基本です。
ちなみに6ヶ月以下の子犬や子猫から始めると慣れるのが早いです。
「まだ歯石がないし大丈夫」ではなくその子の将来のためにお家に来た日から始めましょう。

まずは口に触ることから始めます。
唇をめくって歯茎にタッチしてみましょう。
触らせてくれたら、ご褒美をあげたり大げさに褒めたりしましょう。

 

最初は前歯や、犬歯からはじめ徐々に後ろに進んでいきましょう。
触らせてくれるようになったら、今度は歯茎に触れた状態で「マテ」をしてみましょう。
お家でリラックスしている状態でなんとなくお口の周りを触ってあげるのも効果的です。

IMG_1987.JPGIMG_1995.JPG

次にデンタルシートを使用してみましょう。

指に巻き付けて使用します。

IMG_1985.JPGIMG_1986.JPG

前歯から、奥歯まで磨きます

IMG_1990.JPG

IMG_1994.JPG

 

最後にスプレーをお口に塗ってあげて終了。

 

 

なれてきたら歯の内側も触らせてくれるように練習しましょう。
デンタルシートでも歯の表面についた歯垢は取ることができますが、歯周ポケットまでは綺麗になりません。
このため、歯ブラシまでの準備と考えてもいいでしょう。

しかし!
なかなかブラッシングまで進むのが難しいという場合は、ここで止まってしまっても決して無意味ではありません
以前紹介したように歯の表面に歯石がつくと更に歯石がつきやすくなるので、「見えるとこだけ綺麗にする」でも何もしないよりはずーーーっといいのです。
無麻酔で歯石を取るよりは体に負担もなく、家族の絆も深まるでしょう。

普段からお口を触っていると異変にも気が付きやすくなるので、歯周病の他に腫瘍などにも気付くこともできますしね。

(こちらのHPも参考にしてみてくださいhttp://www.lion-pet.jp/knowledge/oral.htm
ブラッシングについてはまた今後説明しますが、無理に次に進まず、一歩ずつ確実に進めましょう。
まずは自分も動物もストレスにならない範囲でゆとりを持って毎日継続することが肝心です。

ただし、見た目が綺麗でも歯茎の下で歯周病菌が増えている可能性もあるので定期的に獣医さんの診察を受けましょうね。
なかなか動物病院に行く時間がない!という方は自宅で手軽に検査ができるオーラストリップの使用をおすすめしています。


今回は私が実際に使用しているアイテムを紹介しましたが、他にも色んな商品があります。

それぞれに特徴があると思いますので、わからないことは獣医さんに相談してみましょう。

私の使用しているライオンのドクタースペックシリーズ
FullSizeRender 6.jpg
使いやすくレベルに合わせて使用できます。


今回のポイント

1.ベストなケアはブラッシング!
2.まずはお口に触ることから、焦らずゆっくり、嫌がったらやめる、できたら大げさに褒める!

3.お家に来た日から始めて、無理せずできることから継続しましょう。
4.デンタルシートだけでもやらないよりもずっと良い!

5.根気よくできた自分自身も褒めましょう。



次回コラムはデンタルガムやデンタルトイについての説明です。
そしてスケーリング後の秘密兵器も・・・

2017-04-18 23:01:00

歯の本数が多い?

 

まずはこちらの写真

IMG_0203.jpgIMG_0206.jpg


なんだか歯が多い??

サメみたいな歯?

 

 

これは実は乳歯が抜けずに残ってしまった状態です。



本日は乳歯の遺残(乳歯の晩期残存)についてです。

 

乳歯の遺残は特に小型犬によく見られます。

その中でも特に乳犬歯に多いです。

乳歯は永久歯が下から生えてくることによって押されて根っこから吸収されていき、最後には頭(歯冠)だけになってポロッと取れてしまいます。

しかし、犬歯の場合は真下から生えてこず、

上顎犬歯は乳歯の前側から、下顎はベロ側から生えてくることが多いので、永久歯と乳歯が接触する部分が少なく、吸収が十分に起こらず、永久歯が生えても乳歯が抜けないことが多いのです。

ちなみに小型犬に多いのは元々大きな犬種を品種改良して小型化しているので、体に対して歯の大きさが不揃いなのが原因と考えられています。

 

 

IMG_0109.JPGP9052281.JPG

 

生え変わりの時期の目安(品種と体格によって大きく異る場合があります。)

 

 

スクリーンショット 2017-04-18 22.38.41.png

永久歯の萠出時期を超えても乳歯が残っている場合は乳歯遺残を疑いましょう。

 

 

さてさて、この乳歯遺残ですが放おっておくと・・・・

本来よりも歯が多い状態になるので、かみ合わせの変化や

歯と歯が近すぎることによって汚れが溜まりやすくなり歯石の沈着、歯肉炎、歯周炎等を引き起こす可能性があります。

 

IMG_0033.jpg

↑このような状態になると歯周病はどんどん進んでいき犬歯がグラグラしてきたり、歯茎から膿が出てきたり、最悪の場合骨を溶かして、鼻の中に膿が出てきたりすることもあります(なぜ鼻に抜けやすいかは今後紹介いたします。)。
こうなると治すのはなかなか大変で、動物の体にとっては大きな負担になってしまいます。

このため、発見したら早期に抜いてあげるのがおすすめです。

 

 

また、ブログにも取り上げましたが、乳犬歯は必ず先端まで抜いてもらってください。

過去に犬歯の感染が原因で鼻から膿が出てきた症例で、抜歯したら大量の膿と一緒に乳犬歯の根っこが出てきたという報告もあります。

現在のところ乳犬歯の根っこの先端が残ったことによる感染については報告は多くはありません(というよりもおそらく本格的に研究されていません、今後調べていきたいと思います。)しかし、人間の場合は抜歯時に根っこが残ると術後感染のリスクが非常に高く、よほどのことがない限り途中で折れた根っこを残すということはありえません。

動物と人間の違いがあれど基本的な構造は同じなので感染のリスクは当然あります。

 

特に動物の場合は再手術になると再度全身麻酔が必要になり、本来必要なかった麻酔のリスクを背負うことになります。

このため、いろいろな可能性を考え、リスクを最小限にするため必ず先端まで取るようにしましょう。

 

道具の進歩や、医療の発展につれ日々術式は変わっていくものだと考えています。

当院では現状の手法に満足せずより安全で早く抜歯を行えるように努力していきます。

少しでも心配なことがある方はご相談だけでもお気軽にどうぞ。



今回のポイント
1,永久歯が生えているのに乳歯が残っている乳歯遺残

2,乳歯遺残はかみ合わせの異常や、歯周病の原因

3,抜歯をする時は必ず先端まで!

 

 


次回はデンタルケアについてです。

2017-04-08 06:32:00

歯石取り(スケーリング)の時期について

本日はHPのお問合わせより頂いた内容ですが、歯石取りの時期についてです。

今まで何度かご質問いただいた内容でしたので、皆さんに知っていただくために記事にしました。

すこーし長いですがのんびり読んでみてください。

 

お問い合わせは

「2年前に歯石取りを行うために麻酔をしましたが、最近また口が臭くなってきました。また行う必要がありますか?」

と言った内容でした。

 

結論から申しますと・・・

必要です!

 

実は犬や猫の歯石というのは人間と比べて何倍もできやすく、諸外国では年一回のスケーリングを推奨している国もあります。

犬や猫よりも歯石ができにくく、毎日歯磨きをする人間でも3ヶ月に1回のスケーリングが推奨されています。

 

 

ちなみに、間違ってはいけないのは歯石=歯周病=口臭ではないという事です。

歯石は歯に付いた石のようなもので、これは細菌(歯垢)の死骸に唾液や血液のカルシウムが沈着した物です。

以前はこの歯石が歯周病の直接の原因と言われていましたが、現在は否定されています。

歯周病の原因は細菌によるものなんです。

ただ、歯石の表面はクレーター状になっており、細菌(歯垢)が付きやすくなるため、歯周病を進行させる因子になります。
このため、歯周病の治療の際には歯石も取る必要があります。

以前の記事にも書きましたが、ここで重要になるのが歯周ポケット内の目に見えない部分の歯石です。

細菌はジメジメしているところが大好き!

歯周ポケットの中に歯石があると、暗くてジメジメした歯周ポケットの中に細菌にとって絶好の住処をプレゼントしてしまう事になります。
このため、表面だけの歯石をとっても歯周病は進行してしまいます。

また、逆に歯石がないのに歯周病が進行している可能性もあるのです。

 

話がすこしそれましたが・・

口臭がきつくなってきた状態は歯周病が進行してきた状態です。

歯石が付着する歯周病が進行してく(細菌が増える)口臭が出てくるさらに歯石が増えるどんどん細菌にとって住みやすくなる。

という負のスパイラルに突入してしまいます。

これを防ぐためにはご自宅でのケアと観察がとっても大切です。

ケアと観察をきちんと行っておくと

歯周病の進行を遅らせることができる!

つまりスケーリングを行うにしても、1年に1回ではなく2年に1回や、3年に1回で大丈夫になります。

さらに!
定期的に行うことで、処置時間は短くなり一番の心配である麻酔の時間も短くできます。
先程説明したように、歯石が付けばつくほど新たな歯石ができるのが早くなります。

このため少ない時期に取っておいたほうが安心なのです。

歯周病の進行に関してはなかなか目で見てわかりくいと思います。

人間の場合だと、歯医者さんにいくと歯茎をチクチクされて歯周ポケットの深さを計測しますよね?
しかし動物だと麻酔をかけないと難しいです。

このため当院では簡易的な歯周病の進行の検査としてオーラストリップを採用しています。

歯茎をなぞるだけでチオール濃度(口臭の原因物質で細菌が作る)をはかる事ができるすぐれもので、ご自宅でも気軽にチェックできます。

(歯科外来を受診された方は同検査を行っておりますが、「遠方からの来院等でなかなか来れないけど、6ヶ月後にも自宅で行ってみたい」等のご希望がありましたらお気軽にお申し付けください。)

 

 

 

 

 

IMG_0005.jpgIMG_0025.JPG

 

こちらは当院に整形外科疾患で来院した2歳のラブラドールですが、0-1の間くらいなので問題なし。

綺麗に保たれていますね。

 

  

IMG_0030.jpgIMG_0033.jpg

こちらは10歳のポメラニアンですが、スコアは45の間くらい。

歯石もありますが二枚歯になっていますね、早めの対処が必要です。

ちなみに3以上になってくると対処を行ったほうがよいです。

あくまでも簡易的なものなので、100%これで大丈夫なら問題ない!というわけではなく、獣医師によるチェックを行ったほうがなお安心です。

今回のポイント

 ・歯石はそれ自体が歯周病の原因ではないが、歯石があると進行が早くなる!

 ・早め早めの対処で麻酔のリスクはもっと減らせる!

 

そして何よりも大切なのはいつも一緒にいるご家族のケアと観察です。
一緒に小さな家族との最善の生活を考えていきましょう。

 

 

2017-04-01 13:57:00

無麻酔で歯石を取る!

当院では基本的に無麻酔での歯石除去は行っておりません。
無麻酔での歯石除去は私の最も嫌う、その場しのぎの治療に他ならないからです。

アメリカ獣医歯科学会や日本の小動物歯科研究会でも問題として取り上げられていますが、
どちらの声明でも基本的には無麻酔でのスケーリングは避けるべきとされています。

 

なぜなら、無麻酔でのスケーリング(歯石除去)では歯石の中で最も問題となる歯周ポケット内の歯石を取ることが難しいからです。

さらに、痛みで驚いた動物が暴れてしまい、歯周病が進行し細くなっていた顎の骨を折ってしまったり、周囲の人を噛み付くなどの事例もあります。


無麻酔でスケーリングを行う獣医師の言い分として

「人間は麻酔をしないから、動物もいらない」という意見を頂いたことがあります。

歯科医師の立場から申しますと、その知識こそが大きな間違いです。

人間でも歯周ポケット内の歯石を取る際に痛みのある場合は表面麻酔や局所麻酔を併用します。
さらに歯科の治療がどうしても怖い方や、小さな子どもなどは虫歯の治療でも鎮静法などを使用し、ほとんど眠ったような状態で行うこともあります。

人は麻酔していないのだから動物もいらない。

そもそもこれは大きな間違いです。


また、スケーリングを行う際の

超音波スケーラー(歯石除去の道具)

歯の表面をツルツルにするための研磨器具(スケーリング後の歯の表面は凸凹になっているのでそのままだと汚れがつきやすい)

これらは大きな音がしますので、よほどしつけの完璧な警察犬でもない限りびっくりしてしまうでしょう。
そしてこれらの道具を使用せずに歯の表面の歯石を取るのは
動物に大きなストレスを与えるだけでなく、見た目だけの治療に他なりません。


これらの理由から当院では麻酔下で確実に歯石の除去と歯周病治療を行います。



現在麻酔というもの自体の安全性が向上し、一昔前と比較し麻酔リスクは格段に低下しました。

しかし、リスクは0ではありません。

確かに無麻酔で行えば麻酔のリスクは0かもしれません。

その替わり、治療中に暴れた事によって起こる偶発症や
目に見える部分だけ綺麗になって、気が付かないうちに歯周病が進行していき、顎の骨の骨折膿が溜まって顔に穴が開く等の問題が引き起こされるリスクは格段に上がります。

私は無麻酔での歯石除去を「見た目だけの治療」と割り切っているなら100%否定はしません。

しかし、これを完璧な歯周病治療だと説明した上で行っているなら大きな問題だと感じます。

 

全ての治療に利点と欠点が存在します。

それらをきちんと説明し、ご理解いただけた上で治療を行います。


ご不明な点はお気軽にご相談ください。

 


※なお、当院では簡単な矯正治療や型取りの際には鎮静のみで行うこともあります。

1