コラム

2017-04-01 13:57:00

無麻酔で歯石を取る!

当院では基本的に無麻酔での歯石除去は行っておりません。
無麻酔での歯石除去は私の最も嫌う、その場しのぎの治療に他ならないからです。

アメリカ獣医歯科学会や日本の小動物歯科研究会でも問題として取り上げられていますが、
どちらの声明でも基本的には無麻酔でのスケーリングは避けるべきとされています。

 

なぜなら、無麻酔でのスケーリング(歯石除去)では歯石の中で最も問題となる歯周ポケット内の歯石を取ることが難しいからです。

さらに、痛みで驚いた動物が暴れてしまい、歯周病が進行し細くなっていた顎の骨を折ってしまったり、周囲の人を噛み付くなどの事例もあります。


無麻酔でスケーリングを行う獣医師の言い分として

「人間は麻酔をしないから、動物もいらない」という意見を頂いたことがあります。

歯科医師の立場から申しますと、その知識こそが大きな間違いです。

人間でも歯周ポケット内の歯石を取る際に痛みのある場合は表面麻酔や局所麻酔を併用します。
さらに歯科の治療がどうしても怖い方や、小さな子どもなどは虫歯の治療でも鎮静法などを使用し、ほとんど眠ったような状態で行うこともあります。

人は麻酔していないのだから動物もいらない。

そもそもこれは大きな間違いです。


また、スケーリングを行う際の

超音波スケーラー(歯石除去の道具)

歯の表面をツルツルにするための研磨器具(スケーリング後の歯の表面は凸凹になっているのでそのままだと汚れがつきやすい)

これらは大きな音がしますので、よほどしつけの完璧な警察犬でもない限りびっくりしてしまうでしょう。
そしてこれらの道具を使用せずに歯の表面の歯石を取るのは
動物に大きなストレスを与えるだけでなく、見た目だけの治療に他なりません。


これらの理由から当院では麻酔下で確実に歯石の除去と歯周病治療を行います。



現在麻酔というもの自体の安全性が向上し、一昔前と比較し麻酔リスクは格段に低下しました。

しかし、リスクは0ではありません。

確かに無麻酔で行えば麻酔のリスクは0かもしれません。

その替わり、治療中に暴れた事によって起こる偶発症や
目に見える部分だけ綺麗になって、気が付かないうちに歯周病が進行していき、顎の骨の骨折膿が溜まって顔に穴が開く等の問題が引き起こされるリスクは格段に上がります。

私は無麻酔での歯石除去を「見た目だけの治療」と割り切っているなら100%否定はしません。

しかし、これを完璧な歯周病治療だと説明した上で行っているなら大きな問題だと感じます。

 

全ての治療に利点と欠点が存在します。

それらをきちんと説明し、ご理解いただけた上で治療を行います。


ご不明な点はお気軽にご相談ください。

 


※なお、当院では簡単な矯正治療や型取りの際には鎮静のみで行うこともあります。