コラム
2017-04-08 06:32:00
歯石取り(スケーリング)の時期について
本日はHPのお問合わせより頂いた内容ですが、歯石取りの時期についてです。
今まで何度かご質問いただいた内容でしたので、皆さんに知っていただくために記事にしました。
すこーし長いですがのんびり読んでみてください。
お問い合わせは
「2年前に歯石取りを行うために麻酔をしましたが、最近また口が臭くなってきました。また行う必要がありますか?」
と言った内容でした。
結論から申しますと・・・
必要です!
実は犬や猫の歯石というのは人間と比べて何倍もできやすく、諸外国では年一回のスケーリングを推奨している国もあります。
犬や猫よりも歯石ができにくく、毎日歯磨きをする人間でも3ヶ月に1回のスケーリングが推奨されています。
ちなみに、間違ってはいけないのは歯石=歯周病=口臭ではないという事です。
歯石は歯に付いた石のようなもので、これは細菌(歯垢)の死骸に唾液や血液のカルシウムが沈着した物です。
以前はこの歯石が歯周病の直接の原因と言われていましたが、現在は否定されています。
歯周病の原因は細菌によるものなんです。
ただ、歯石の表面はクレーター状になっており、細菌(歯垢)が付きやすくなるため、歯周病を進行させる因子になります。
このため、歯周病の治療の際には歯石も取る必要があります。
以前の記事にも書きましたが、ここで重要になるのが歯周ポケット内の目に見えない部分の歯石です。
細菌はジメジメしているところが大好き!
歯周ポケットの中に歯石があると、暗くてジメジメした歯周ポケットの中に細菌にとって絶好の住処をプレゼントしてしまう事になります。
このため、表面だけの歯石をとっても歯周病は進行してしまいます。
また、逆に歯石がないのに歯周病が進行している可能性もあるのです。
話がすこしそれましたが・・
口臭がきつくなってきた状態は歯周病が進行してきた状態です。
歯石が付着する→歯周病が進行してく(細菌が増える)→口臭が出てくる→さらに歯石が増える→どんどん細菌にとって住みやすくなる。
という負のスパイラルに突入してしまいます。
これを防ぐためにはご自宅でのケアと観察がとっても大切です。
ケアと観察をきちんと行っておくと
歯周病の進行を遅らせることができる!
つまりスケーリングを行うにしても、1年に1回ではなく2年に1回や、3年に1回で大丈夫になります。
さらに!
定期的に行うことで、処置時間は短くなり一番の心配である麻酔の時間も短くできます。
先程説明したように、歯石が付けばつくほど新たな歯石ができるのが早くなります。
このため少ない時期に取っておいたほうが安心なのです。
歯周病の進行に関してはなかなか目で見てわかりくいと思います。
人間の場合だと、歯医者さんにいくと歯茎をチクチクされて歯周ポケットの深さを計測しますよね?
しかし動物だと麻酔をかけないと難しいです。
このため当院では簡易的な歯周病の進行の検査としてオーラストリップを採用しています。
歯茎をなぞるだけでチオール濃度(口臭の原因物質で細菌が作る)をはかる事ができるすぐれもので、ご自宅でも気軽にチェックできます。
(歯科外来を受診された方は同検査を行っておりますが、「遠方からの来院等でなかなか来れないけど、6ヶ月後にも自宅で行ってみたい」等のご希望がありましたらお気軽にお申し付けください。)
こちらは当院に整形外科疾患で来院した2歳のラブラドールですが、0-1の間くらいなので問題なし。
綺麗に保たれていますね。
こちらは10歳のポメラニアンですが、スコアは4−5の間くらい。
歯石もありますが二枚歯になっていますね、早めの対処が必要です。
ちなみに3以上になってくると対処を行ったほうがよいです。
※あくまでも簡易的なものなので、100%これで大丈夫なら問題ない!というわけではなく、獣医師によるチェックを行ったほうがなお安心です。
今回のポイント
・歯石はそれ自体が歯周病の原因ではないが、歯石があると進行が早くなる!
・早め早めの対処で麻酔のリスクはもっと減らせる!
そして何よりも大切なのはいつも一緒にいるご家族のケアと観察です。
一緒に小さな家族との最善の生活を考えていきましょう。