コラム
2017-04-18 23:01:00
歯の本数が多い?
まずはこちらの写真
なんだか歯が多い??
サメみたいな歯?
これは実は乳歯が抜けずに残ってしまった状態です。
本日は乳歯の遺残(乳歯の晩期残存)についてです。
乳歯の遺残は特に小型犬によく見られます。
その中でも特に乳犬歯に多いです。
乳歯は永久歯が下から生えてくることによって押されて根っこから吸収されていき、最後には頭(歯冠)だけになってポロッと取れてしまいます。
しかし、犬歯の場合は真下から生えてこず、
上顎犬歯は乳歯の前側から、下顎はベロ側から生えてくることが多いので、永久歯と乳歯が接触する部分が少なく、吸収が十分に起こらず、永久歯が生えても乳歯が抜けないことが多いのです。
ちなみに小型犬に多いのは元々大きな犬種を品種改良して小型化しているので、体に対して歯の大きさが不揃いなのが原因と考えられています。
生え変わりの時期の目安(品種と体格によって大きく異る場合があります。)
永久歯の萠出時期を超えても乳歯が残っている場合は乳歯遺残を疑いましょう。
さてさて、この乳歯遺残ですが放おっておくと・・・・
本来よりも歯が多い状態になるので、かみ合わせの変化や
歯と歯が近すぎることによって汚れが溜まりやすくなり歯石の沈着、歯肉炎、歯周炎等を引き起こす可能性があります。
↑このような状態になると歯周病はどんどん進んでいき犬歯がグラグラしてきたり、歯茎から膿が出てきたり、最悪の場合骨を溶かして、鼻の中に膿が出てきたりすることもあります(なぜ鼻に抜けやすいかは今後紹介いたします。)。
こうなると治すのはなかなか大変で、動物の体にとっては大きな負担になってしまいます。
このため、発見したら早期に抜いてあげるのがおすすめです。
また、ブログにも取り上げましたが、乳犬歯は必ず先端まで抜いてもらってください。
過去に犬歯の感染が原因で鼻から膿が出てきた症例で、抜歯したら大量の膿と一緒に乳犬歯の根っこが出てきたという報告もあります。
現在のところ乳犬歯の根っこの先端が残ったことによる感染については報告は多くはありません(というよりもおそらく本格的に研究されていません、今後調べていきたいと思います。)しかし、人間の場合は抜歯時に根っこが残ると術後感染のリスクが非常に高く、よほどのことがない限り途中で折れた根っこを残すということはありえません。
動物と人間の違いがあれど基本的な構造は同じなので感染のリスクは当然あります。
特に動物の場合は再手術になると再度全身麻酔が必要になり、本来必要なかった麻酔のリスクを背負うことになります。
このため、いろいろな可能性を考え、リスクを最小限にするため必ず先端まで取るようにしましょう。
道具の進歩や、医療の発展につれ日々術式は変わっていくものだと考えています。
当院では現状の手法に満足せずより安全で早く抜歯を行えるように努力していきます。
少しでも心配なことがある方はご相談だけでもお気軽にどうぞ。
今回のポイント
1,永久歯が生えているのに乳歯が残っている乳歯遺残
2,乳歯遺残はかみ合わせの異常や、歯周病の原因
3,抜歯をする時は必ず先端まで!
次回はデンタルケアについてです。