講師(宗夜)ブログ

2024-04-19 22:12:00

●でんじろう先生

うちは家族は揃ってサイエンス好きで、子どもが幼稚園児から小学生にかけて科学館や博物館に行きまくりました。

中でも北の丸公園にある科学技術館は大のお気に入り。

閉館ギリギリまで粘り最後はショップで科学おもちゃを買って帰るのがいつものコースでした。

 

私は文系ですが理系の科目に強い憧れがあります。

もしも中学時代か高校時代にタイムスリップ出来たら、ひとつの科目も怠らずに勉強するのになぁ、なんて思ったりします。

あの頃は勉強が嫌いでした。

実に勿体無いことをしたという思いで今はいっぱいです。

本当はあの勉強は面白かったんじゃないかと思うのです。

かなり面白かったんじゃないか、と。

 

そんな風に思うきっかけが『でんじろう先生』でした。

有名な空気砲はダンボールで何度も作りました。

子どもはサイエンスに見事にハマってピタゴラ装置を作ったり、基盤を買ってロボットを作ったりしました。

一緒に楽しみ始めたはずが、あっという間に子どもに抜かされて、何を言っているのか分からない会話をしています。

 

小学校の高学年になるとサイエンスの実験をさせてくれる教室に通い、高度な専科コースにも参加しました。

専科コースではお弁当と水筒を持ち、小さな白衣を着て、朝から夕方まで一日中研究室で実験とデータの収集をします。

小学生ながら顔はいっぱしの研究者で、先生の質問を真剣に聞き、実験を行い、データ収集の結果をみんなで共有して理論と実践のズレを実感。

最後はきちんとレポートにまとめて先生に提出します。

迎えに行くと

『今日の実験はああで、こうで…』

と一日の説明をしてくれましたが、私にはさっぱり理解できません。

えー、何それ。

そんなに楽しいの?

いいなぁ、そんなに楽しいのかぁ。

私も子ども時代にでんじろう先生に出会っていたらなぁーと羨ましい気持ちになりました。

 

ん?ところで、でんじろう先生ってどんな人?

気になっていた時にNHKの番組で、でんじろう先生のことが取り上げられていました。

元は高校で物理を教えていたそうです。

でも効率を重視する高校教師の仕事には向いておらず、周囲の方もご本人も苦労したようでした。

マネジメントが苦手で、スケジュールに沿って結果を上げるということが性に合わず、ご自身の大学受験に3浪されたとのこと。

高校教師になっても苦手意識は消えず、『誰も授業を聞いてくれなくてつらかった』と話されていました。

つらい日々を慰めてくれたのが、夜に楽しむ実験でした。

『自分がこんなに楽しいと思えるなら、他の人のことも楽しませることが出来るんじゃないか』

と、思い切って高校教師の職を辞したと語っておられました。

『好きなことを軸にすると、人間関係が苦手でもコミュニケーションが取れるんですよね。あ、自分はこんなに話せるんだ。人を笑わせられるんだって自信がつきました。』

 

悩んで、悩んで、ようやく自分の道を見つけたからでしょうか。

でんじろう先生の実験は、あったかい。優しくてほっとする。

 

たくさんの弟子を抱えているようで、科学技術館でのサイエンスショーでは

『僕はでんじろう先生の18代目の弟子です』

と講師の若者が誇らしそうに胸を張っておられました。

本当に頭の良い人って、でんじろう先生みたいな人のことを言うのだろうなぁ、と思いました。