一言法話

2024-02-01 06:54:00

112.福は内


2月3日は節分、2月4日は立春です。日光院では毎年2月4日の立春に星祭り法要を行っております。また、法要後には当たりくじの入った豆まきを行います。
豆まきのかけ声と言えば「鬼は外 福は内」が一般的ですが、日光院では「福は内 福は内」のかけ声で行います。なぜ「鬼は外」は言わないのかということについてお話します。
そもそも鬼とは何でしょう。本当の鬼を見たことのある人はまずいないと思いますが、金棒を持ち、角のある赤鬼や青鬼の姿をイメージすることは誰でもできるでしょう。「悪い物」「恐ろしい物」の代名詞として使われることの多い「鬼」ですが、仏教における鬼とは自分勝手な欲望、つまり煩悩のことを表します。
自分勝手な欲望は、そのままでは菩提(悟り)を目指す修行の妨げとなるものですが、仏教では「煩悩即菩提」という概念があり、欲望は悟りへ向かう大切な要素となります。苦しみを逃れ、本当の幸せを得たいという欲は誰にでもあるものですし、仏教がそういった欲を否定することはないのです。ただし、誰かを押しのけてまでといったような自分勝手なものであれば、それは結果的に自らを苦しめるものとなってしまうと考えます。
真言宗では大欲を目指そうと説きます。自分さえよければといった小さな欲を、周りと共に幸せになっていこうとする大きな欲に変えることができれば、揺るぎない本当の幸せを手に入れることができるでしょう。
ですから、日光院では「鬼は外」と鬼(煩悩)を追い払うのではなく、鬼とも呼ぶべき自らの煩悩を大欲にまで広げ、皆で共に福を呼び寄せられるようにという意味を込め「福は内 福は内」との掛け声で豆まきを行っています。