一言法話

2023-11-16 07:43:00

107.情けは人の為ならず


連日のように、パレスチナとイスラエルの戦争が報道されています。どのような理由があるにせよ、一般市民へも情け容赦のない攻撃が続いているこの状況に、心は痛むばかりです。

「情け」という言葉が使われることわざに「情けは人の為ならず」がありますが、このことわざの意味としてどちらが正しいでしょう。

1 人に情けをかけると、結果的にその人の為にならない
2 人にかけた情けは、自分に返ってくる

答えは2です。しかし、この言葉は誤解されている方も多く、平成22年に行われた文化庁の「国語に関する世論調査」では、1の方を選んだ人が45.7%いたことがわかりました。
「情けは人の為ならず」は人を助けたり、親切にしたりしたことは、巡り巡って自分のもとに返ってくるという、仏教の因果応報の教えを表した言葉であると言えます。
また、人を助けたり、親切にすることは、巡り巡って自分に返ってくるだけではなく、直接的にその時その場で自らに幸福感を与えてくれる行為であるともいえます。
カナダの生理学者、ハンス・セリエは、他人を幸せにしようとすることによって、自らのストレスは減り、結果、その人の幸福感は強くなると言いました。ちなみに、ストレスという言葉は、1936年にセリエがストレス学説を発表して以来、広く使われるようになったといわれています。

お大師さまの『御請来目録』に、このようなお言葉があります。
それ釈教は浩汗にして際なく涯なし
一言これを蔽えばただ二利あり

お釈迦さまの教えは、広大で際限なく果てしないが、一言で言うならば、それは自分の幸せのために精神修養(自利)することと、他人の幸せを願い、救いの手を差し伸べる(利他)ことであるということです。
仏教の教え、そして真言宗の教えは、自利(自分の幸福)だけを願うものではありません。そして、他利(他人の幸福)だけを願うものでもありません。その二つ心を車の両輪のごとく、同時に動かし続けることによって、悟り(本当の幸福)へと真っすぐに進むことが出来ると考えます。