一言法話
83.ロバと親子 その1
「ロバと親子」という話を聞いたことがありますか。
ある親子が町の市場でロバを売るため、ロバを引いて田舎道を歩いていました。
その様子を見ていた女の子たちが、道端で親子に聞こえるような大きな声でこう言いました。
「なんて馬鹿な親子なの。どっちか1人がロバに乗ればいいのにさあ」
それを聞いた親父さんはもっともだと思い、あわてて息子をロバに乗せました。
しばらく行くと、老人たちが焚き火をしているところに通りかかりました。
老人の1人がこう言います。
「今どきの若者は年寄りを大切にしない。年とった親父さんが疲れた様子で歩いているのに、あの子はロバに乗ったまま平気でいるなんてとんでもないことだ」
親父さんは、それもそうだ、息子がそんな風に思われては大変、と息子をロバから下ろし、今度は自分がロバに乗りました。
しばらく行くと、子どもを抱いた3人の女たちに会いました。1人の女がこう言います。
「全く恥ずかしいことだよ。子どもがあんなに疲れた様子で歩いているのに、自分は知らん顔でロバに乗ってさ。可哀想な息子だねー」
困った親父さんは、すぐに自分の鞍の前に息子を乗せました。
しばらく行くと、数人の若者に出くわしました。すると1人の若者が興奮気味にこう言いました。
「あんたたちどうかしてるぜ。ロバが可哀想じゃないか。あんたたちには慈悲の心ってものがないのかい」
その通りだと思い、2人はロバから下りました。そして親父さんは言いました。
「こうなったら、2人でロバを担いでいくしかないな」
ロバの前足と後足をそれぞれ綱で縛って、その足を道端の丈夫そうな太い木の枝に通し、2人で担いで歩いて行きました。
町の人達はもがき苦しむロバを必死に担ぐ親子を見て、大笑いしながら「何やってんだい。ロバを歩かせて運べばいいのに」と言いました。
「ロバと親子」はドイツのお話ですが、これに似た話は世界中にあるそうです。このお話は一体どんなことを私達に語りかける話なのでしょうか。
話が長くなりましたので、この続きは次回お話します。