一言法話

2022-10-11 00:00:00

70.素直な笑い

 

先日、プロレスラーのアントニオ猪木さんが、全身性トランスサイレチンアミロイドーシスという難病により心不全でお亡くなりになりました。政治家としても様々な活動をされた猪木さんには「元気があれば、何でもできる」などの名言がありますが、その中の一つに「一生懸命やっている人を小馬鹿にするのは、自分がかなわないから笑うことで逃げているのだ」という言葉があります。

笑いには様々な種類があるといわれます。
面白さ、快を感じることによって起こる笑い。これが人間の笑いの最も基本的な形とされます。
人間関係を円滑にするような社交上の笑い。幼少期にはあまり見られず、大人ではこれが最も頻度が高い笑いだといわれます。
緊張が弛むことによる安心感から表出する笑い。緊張を緩めようという意思であえて出す笑いもこれに含まれます。
しかし、猪木さんの言葉にある「一生懸命やっている人を小馬鹿にする笑い」は、これらの笑いとは違って卑劣で、厭らしい笑いだといえるでしょう。
お大師さまは『般若心経秘鍵』の中でこうおっしゃっておられます。

「痛狂は酔わざるを笑い 酷睡は覚者を嘲る」 

自分を失くすほどの酒を飲み、酔い潰れた人は、素面(しらふ)の真面(まとも)な人をつまらない人だと小馬鹿にして笑い、眠りこけたようにいたずらに時を過ごす人は、努力し正しく生きている人を批判し、嘲笑するものだ

笑いには脳の働きを活発にし、血行を促進し、免疫力をアップしたりといった様々な効能があるといわれます。しかし、自らを省みず、人を小馬鹿にするような笑いにはそのような効能があるとは思えません。そんな笑いは逆に自らの心に悪い種を植え付けてしまいます。素直な心で素直に笑える日々を送りたいものです。