一言法話

2022-05-10 00:00:00

55.花の徳

 

雪が降り積もった冬景色から一転、あっという間に雪解けが進み、桜の開花とともに例年よりも早く春が訪れました。そんな桜の季節もそろそろ終わりを迎えようとしております。日本人が大好きな桜をはじめ、道端に何気なく咲いている花、花瓶や花器に綺麗に生けられた花、そんな花々を目にした時、私たちの心は自然に清々しくなるものです。

代表的な六つのお供物(水、塗香、花、焼香、飲食、灯明)を仏さまに供養することを六種供養といいます。仏教徒が悟りの岸に向かうための六つの徳行(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)がありますが、六種供養のお供物はその六つの徳行それぞれを表します。

閼伽(水)-布施
塗香-持戒
華鬘(花)-忍辱
焼香(線香)-精進
飲食(ご飯)-禅定
灯明(ろうそく)-智慧

花は耐え忍ぶ大切さ、忍辱を表します。花には見る人の心を安らかにし、怒りを静める力があります。また、花の種は土の中で自然条件が整うのをじっと待ち、やがて芽を出し、寒さ暑さや厳しい雨風にも耐え、見事な花を咲かせます。
また、花は誰かに褒められようと綺麗な花を咲かすわけではありません。見返りを求めることなく、自らの命の限り、花を咲かせます。そんな花々の姿を目にすることで、私たちは苦痛を耐え忍び、ただひたすらに自らの命を生ききることの素晴らしさを学ぶことができます。
私達の命は花の一生と同じようにいつかは散っていく儚いものであると言えますが、だからこそ、思い通りにいかない辛さや、苦しいと思われることも耐え忍び、この世での命の花を精一杯咲かせたいものです。