一言法話

2022-03-21 00:00:00

50.正御影供

 

今日321日は春分の日、そしてお彼岸の中日です。春分の日、お彼岸のお中日はその年によって日にちが変わります。しかし、真言宗にとって、この321日という日は毎年変わらない大切な日です。835年(承和2年)のこの日321日にお大師さまは、高野山の奥の院の御廟において永遠の禅定に入られました。お大師さまはこの日をもってご入定されたのです。高野山の寺院をはじめ、真言宗の各寺院においても、毎年この日を特別な日と考え、「正御影供」の法要を執り行います。では、お大師様はどのような思いをもって御入定されたのでしょうか。

天長9年(832年)822日、お大師様の長年の夢であった「万灯萬華会」の大法会が高野山で開かれました。万の灯明の光が仏の智恵となって迷える衆生を救い、万の花の香りが衆生の悟りの目を開かせるようにと願い、この法会は開催されました。
お大師さまはこの法会の中で「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなん」と永遠の誓願をたてられました。
仏教学者で真言宗智山派の管長でもあられた宮坂宥勝師はご誓願をたてられたお大師さまの思いをこのように解釈されています。
「仏界の諸仏、すべての人びと、空飛ぶ鳥や地上の虫類、水中の魚や獣に至るまで、およそ宇宙法界(ほっかい)の存在する限りのありとあらゆるものは、すべてこれ我が恩の恵みである。したがって、これらのものが一つ残らず仏と同一の悟りに入ることを願いたい」
お大師さまはこのような壮大な願いをお持ちになられ、高野山の奥の院に入定され、今もなお禅定を続けられているわけです。
ですからテレビ等でご覧になったことのある方も多いかと思いますが、高野山奥の院では1200年近く、欠かすことなく、12回お大師さまへお食事を届ける「生身供」の儀式を行っています。

日光院ではお大師さまの大いなる誓願を仰ぎ、お彼岸の中日の日が変わっても、お大師さまがご入定された321日に毎年「春彼岸会」と「正御影供」を合わせて行っています。