一言法話

2022-03-11 00:00:00

49.四恩

 

先月24日から始まったロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻は、今のところ終わりを迎える気配はありません。罪のないたくさんの人達を下敷きにしてしまったコンクリートの瓦礫の山。泣きじゃくった子供とともにその場から避難しなくてはいけない母親と、国を護るため残って戦う決断をした父親との別れの場面。連日テレビで映し出されるそれらの様子を見るたび、心痛まずにおれません。

お大師さまの著作に度々「四恩」という言葉が見出されます。「四恩」は『心地観経』に「父母の恩 衆生の恩 国王(国)の恩 三宝の恩」の四つの恩であると説かれます。

父母の恩は言葉の通り、父と母の恩です。
この世での生を授け、育ててくれた父母の恩が一つ目の恩です。

二つめの衆生の恩とは、生きとし生けるものすべての恩です。
自分とは全く関係がないと考えてしまうような命の営みであっても実は様々な縁によって、関連性を持ち、私という命を育んでくれていると考えるのが仏教です。日々口にする食べ物のことを考えてみても、それを畑で育てる人、海や山から採取する人、それらをあらゆる場所に届ける人、調理する人、様々な人々や命の営みが関わっています。そのように深く考えていくと、物心両面にわたり、私たちは様々な命に恩を受けているということになります。

三つめは国王(国)の恩。
日々を安心してこの地に過ごすことができるのは、この国土が安定した状態にあるからにほかなりません。今回のウクライナ、そしてロシアの状況、また今日はまさしく東日本大震災が起こってから11年目となりますが、そうした様々な事態が起こったならば、私たちは心平静を保ったまま生きることなどできません。そう考えると私たちの住む国土が安定した状態にあるならば、そのことの恩ということを感じずにはおれません。

最後が三宝の恩。
三宝とは仏、法、僧の三つを言います。仏はまさしく仏さま、法は仏が説かれた教え、僧は仏と仏が説かれた教えを大切にする人たちをいいます。
仏教では私たち悩み多き者は仏教の教えによってこそ救われると考えるので、その教えを説かれた仏、その教え(仏法)そのもの、そしてその教えを大事に考える存在を三つの宝とするわけです。

ウクライナの状況を想像するとあまりに辛く、目を閉ざしたくなってしまいますが、そんな中でも私たちは様々なおかげ(恩)によって日々を過ごさせていただいていることに感謝の念を持ち、この紛争が少しでも早く解決していくよう祈りましょう。