一言法話

2022-03-01 00:00:00

48.己が身にひきくらべて

 

恐れていたことが起こってしまいました。先月24日ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を始めてしまいました。連日のニュースに心痛める毎日です。隣接する日本に住む我々といたしましても、なおさら他人ごとでは済まされない思いです。
このような事態を私たち仏教徒はどう考えればよいのでしょうか。この一言法話の中でも度々、引用させていただいている「法句経」の中にこのような言葉があります。

すべての者は暴力に怯え、すべての者は死を恐れる。己が身をひきくらべて、殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ。

すべての者は暴力に怯える。すべての生きものにとって生命は愛しい。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。

仏教徒として、日常生活を送る上で守るべき基本的な十の戒めがあります。これを「十善戒」といい、その最初が「不殺生」つまりは生き物の命を自らの意思で殺してはならないというものです。なぜ命あるものを殺してはいけないのかということをこの「法句経」の言葉は私たちに示してくれます。
私たちは誰もが暴力に怯え、死を恐れます。誰かに殺されたいと思う人は、まずいないでしょう。
「己が身にひきくらべて」というのは、暴力によって怯え、殺されていく側に自分の身を置いてみなさいということです。殺される生命の恐怖や苦しみを、自分自身の恐怖や苦しみとして受けとめるならば、殺す側に立つことなどできません。いかなる理由があれ、暴力を行使し、人を殺してしまうような残忍な行為に走ってしまうのは、暴力を受ける個々の生命に「己が身をひきくらべる」思いが欠けているからということに他なりません。

この大変な状況が少しでも早く収まることを願い、「不殺生」という戒めを心に刻みましょう。