一言法話

2021-10-01 00:00:00

33.北海道三十三観音霊場

 

この一言法話を始めてから、もうすぐ1年、今回が33話となります。その33という数にちなみ、日光院が七番札所になっている「北海道三十三観音霊場」についてお話したいと思います。
北海道にも様々な霊場がありますが、北海道の中で一番古い霊場が北海道三十三観音霊場です。

大正2年に四国徳島出身の山本ラクさんという方が、北海道のおもだった三十三ヶ寺の真言宗寺院に西国三十三観音霊場と同じご本尊三十三体を奉納されたことから北海道三十三観音霊場は開創されました。ラクさんは1845年に徳島県七条村(現在の徳島県上板町)に生まれましたが、幼くして母や姉妹を亡くし、48歳の時にはひとり娘にも先立たれ、迎えた養子をも亡くしてしまいます。ところが、そういった苦境にもめげることなく、割烹旅館数軒の経営に成功し、資産家となりました。しかし、様々な思いを抱えていたのでしょう、60歳になると徳島の旅館を整理し、大阪の高僧をたずね、仏門に入るため得度をし「善真(ぜんしん)」という名を授かり、四国八十八ヶ所を何度も巡礼しました。当時はラクさんの生まれ故郷、徳島から北海道に入植した人がたくさんいました。そこで、困難な開拓に明け暮れる人たちの心のよりどころにもなるようにと北海道に観音霊場を創ろうと決意したといいます。霊場を開創したのち大正7年には旭川市に「高野山大師教会山本支部」を設立したラクさんは晩年、故郷の徳島県に戻り、大正15年、82歳で遷化されました。

ラクさんの熱い思いにより開創が成し遂げられた北海道三十三観音霊場は、第一番札所、函館の高野寺から始まり、第三十三番札所、室蘭の大正寺まで、ほぼ北海道一周を巡り、その総距離は二千三百キロにも及びます。四国の八十八ヶ所が総距離、千四百キロ程だといわれていますので、北海道三十三観音霊場のスケールの壮大さがいかにすごいかお判りいただけるかと思います。一度に巡るには車で回っても10日近くかかります。
残念ながら今現在、コロナ禍ということもあり、巡礼されている方は多くはありませんが、時機を得ましたら、一度に巡るのは難しくても、少しずつでも霊場巡りをしてみませんか?