一言法話

2021-06-21 00:00:00

23.幼き頃のお大師さま

 

前回、お大師さまの誕生日をお祝いする「青葉まつり」のお話をいたしましたが、今回は貴物(とうともの)と呼ばれていた幼き頃のお大師さまについてもう少しお話しします。

お大師さまが生まれて間もない頃、唐から渡ってこられた法進上人(鑑真の高弟)が讃岐の国(現在の香川県)にやってきました。たまたまお大師さまの生家近くの民家に宿していたところ、赤ん坊の泣き声を耳にしました。すると法進上人はこう予言したと言います。
「この子は生まれながらにして仏縁を具えている。成長してからは仏の教えを広めるだろう。」と。

また、朝廷から派遣されたある役人は道端で遊ぶ真魚さま(お大師さまの幼名)の姿を見て、馬から降りて、恭しく礼拝をしたといいます。
お共がその訳を尋ねたところ「この子は四天王(仏法を守護する仏たち)によって守られている子供である。」と答えました。

「捨身ヶ嶽伝説」という真魚さま7歳の頃の伝説も残されています。
ある時、真魚さまは、我拝師山(がはいしさん)という山に登り、捨身ヶ嶽という断崖絶壁の頂きからこう唱えました。「私は将来、仏の道に入って、仏の教えを広め多くの人々を迷いから救いたい。お釈迦さま、この願いが叶うならどうぞお姿を拝ませてください。どうぞお姿を表し霊験をお示しください。もし叶わぬならこの身を捧げます。」と手を合わせ、高い崖から身を投じられました。すると、なんと紫雲の中から蓮華に座ったお釈迦さまがあらわれ、大光明を放たれ、天女が舞い降り、真魚さまを抱きとめられたといいます。

これらのお話から、お大師さまは幼いころから慈悲の心に満ち溢れ、将来の姿が約束されるほど仏様とのご縁が深い存在であったことがわかります。