一言法話

2021-06-01 00:00:00

21.大事な石

 

ある森の中に一匹のサルがいました。このサルはいつも一つの丸い石を肌身離さず持ち歩いていました。ある日、腹を空かせていたこのサルは小さな沼の中においしそうな魚を見つけました。ところが、沼に入り魚を取ろうとしたその時、大事なこの石を落としてしまいます。サルは必死になって川の底に手を伸ばし、石を探しました。大事なあの石を失くしたら大変だと、沼の底を手でかき回し、血眼になって探したのですが、探せば探すほど沼は泥で濁ってしまい、石は見つかりません。
辺りがすっかり暗くなっても、サルは探すことをやめません。森の鳥や他の動物たちは「サルさん、いい加減、少し休んだほうがいいですよ」と、みんなサルを心配し、声をかけました。しかし、永遠にその石を失ってしまうのではないかと恐れたサルは、休むことなく、一心不乱に探し続けました。それでも、やはり石は見つからず、とうとうサルは疲れ果て、その場に座り込んでしまいました。夜も明け、気付けば辺りは明るくなり始めました。サルはとうとう動き回るのをやめ、探すのを諦めた時、川はやっと静寂を取り戻しました。すると、サルがかき回して濁らせていた水は泥が沈み、底まで透き通って見えるようになりました。こうしてようやくサルは失くしてしまった大事な石を見つけることができました。

みなさんにとっての「大事な石」とは何でしょう。自分にとってのそれがいったい何なのか、見つけたい、知りたいと思っても、このサルのように心乱れた状態で、欲にまみれ、やみくもに探し回ってばかりいては決して見つかりません。本当に大事にするべきものは、心が澄み渡った時、はじめて見つかるものなのでしょう。