一言法話

2021-05-10 00:00:00

19.一鳥に聞く

 

閑林に独坐す草堂の暁 (かんりんに ひとりざす そうどうのあかつき)
三宝の声一鳥に聞く (さんぼうのこえ いっちょうにきく)
一鳥声有り人心有り (いっちょう こえあり ひと こころあり)
声心雲水倶に了了 (せいしん うんすい ともにりょうりょう)

これはお大師さまの「後夜仏法僧鳥を聞く」という詩です。
「後夜」とは午前4時頃のことです。「仏法僧鳥」とは鳴き声が「ぶっ・ぽう・そう」と聞こえる小型のフクロウ、コノハズクのこと、「仏法僧」は三つの宝「三宝」ともいい、「仏さま」「仏法(仏の教え)」「仏の教えを護り伝える僧侶、集団」を意味します。

お大師さまは静寂なる高野山でひとり静かに瞑想にふけっていた夜明け、「仏・法・僧」(ぷっ・ぼう・そう)と鳴く鳥の声を耳にし、そういった鳥の声、人の心、空に浮かぶ雲、流れゆく水、全てが解け合い、そのひとつひとつに「仏のいのち」が宿っていることを詠みあげられました。

お大師さまは青年時代、阿波の大瀧岳や土佐の室戸岬など自然の中で修行を重ね、その室戸岬の御厨人窟で修行をしているときに、明けの明星(明け方に見える金星)が口に飛び込んでくるという不思議な体験をされます。また晩年は高野山で静かに修法することを好まれ、「仏のいのち」が解け合っていることの素晴らしさを詩などに著されました。