一言法話

2021-03-01 00:00:00

12.小鳥の消火活動

 

このところ、日本各地で山火事が立て続けに発生し、たくさんの消防隊員の懸命な消火活動を、毎日のようにテレビで目にいたします。

『雑宝蔵経』というお経にこんなお話があります。
ある山の奥に、たくさんの動物たちが仲良く暮らす森がありました。ところがある日のこと、山火事が起こります。火は次第に燃え広がって、動物たちが平和に暮らす森にも火は迫ってきます。動物たちは、みんなで力をあわせて火を消そうとしましたが、炎は燃え盛り、やがて動物たちの森は、その大きな火に飲み込まれてしまいます。動物たちは火を消すことをあきらめ、森を捨て逃げ始めました。しかし、小さな小鳥が一羽、燃え上がる山火事の中を行ったり来たりしています。小鳥は近くの池に降りては、その小さな翼を水に浸らせ、舞い上がっては巨大な炎に向けて、翼についたわずかな水を落としているのです。動物たちは口々に言いました。
「小鳥さん、馬鹿なことをやめなさい。無駄なことはやめなさい。あんな大きな炎なのですよ。あなたのそんな小さな翼から落ちる水滴で消せるわけがないじゃないですか。早くこちらに逃げて来なさい」
小鳥は、翼も体も炎と煙で真っ黒になりながら答えます。
「私の小さな翼から落ちる水滴でこの山火事が消すことは難しいでしょう。私のやっていることは、馬鹿なこと、無駄なことかもしれません。でも、私はこうしないではいられないのです。消すことは出来なくても、消さなければという自分の想いに正直でありたいのです」
その時、これを見ていた仏法の守護神、梵天は小鳥の真摯な想いに打たれ、大雨を降らし山火事を鎮めたという話です。

私たちはややもすると結果ばかりを追い求め、それが難しいと分かればすぐに諦めてしまいがちです。しかし何事においても、自分がするべきこと、出来得ることをこつこつと行いたいものです。そうすればきっと何かの形で道は開けてくれるはずです。たとえ、そこに結果がともなわなかったとしても、自分の想いに正直な行動を起こしたのであれば、充実感に包まれ、後悔することは何もないでしょう。