一言法話

2021-02-21 00:00:00

11.二人の人生

 

過酷な環境で育った双子がいました。双子の父親は麻薬の常習者で、酒に酔っては妻と子供に暴力を振るったそうです。双子が30代になったとき、心理学者が二人にインタビューをしました。
双子のうちの一人は薬物中毒になり、生活保護をうけていました。彼の暴力が原因で、妻と子供は家を逃げ出してしまいました。心理学者は彼に質問しました。
「あなたはなぜこんなことを自分と自分の家族にしてしまったのですか」
「あんな家庭に育った私に、これ以外の何ができるというんだ」
双子のうちのもう一人はビジネスで成功して幸せな結婚をし、すばらしい親になっていました。心理学者は彼にも質問をしました。
「あなたはなぜ、これほどまでのことが成し遂げられたのですか」
「あの家庭に育った私に、これ以外の何ができるというのですか」
双子で同じ環境に育った二人でしたが、このように全く違った人生を歩みました。一人は育った環境に流され、道を踏み外してしまいました。一方のもう一人はその環境に染まるのではなく、逆にそれを反面教師として、父親とは正反対のすばらしい人生を歩みました。
お釈迦さまのお言葉「法句経」にこうあります。

自己こそ自分の主である。他人がどうして(自分の)主であろうか?
己をよくととのえたならば、得難き主を得る。

前回の一言法話でお話した“割れ窓理論”の通り、私たちは周りに流されやすい存在といえます。しかし、自分にとって望まないような状況が続いたとしても、自己をよく整えることができるならば、望みはしなかった経験さえも生かすことができるわけです。そのようにできるかどうかは、まさしく自分次第だと心に刻んでいきましょう。