一言法話

2020-12-22 16:53:00

5.捉え方一つで

 

今年もあと少しとなってまいりました。コロナ禍により、様々な場面で不自由さを実感する一年でありました。どの寺院でも法要を行うことがままならなかったり、人と人との集まりも状況に応じて自粛や延期せざるを得なかったり。檀家さんのお宅にお参りに伺ってもコロナの話題が出ない日はなく、まさしくコロナに振り回された「禍」の年だったと愚痴りたくなるような一年でした。

 
しかし真言宗の宗祖、お大師さまは『秘蔵宝鑰』という書物の中で「知らず自心の天・獄たることを、あに悟らんや唯心の禍災を除くことを」 と述べておられます。 

物事をどう捉えるかによって、この世を極楽と見ることも地獄と見ることも出来る。そのことを知って、澄んだ仏の眼でもって物事を見ることが出来れば、心の禍災を除くことができるのだと。

  
松下電器(現パナソニック)の創設者である松下幸之助さんはまだ若かったころ、毎日、大阪築港の桟橋から船に乗って仕事場に通っていたそうです。夏のある日、帰りに船べりに腰かけていると、一人の船員が幸之助さんの前を通ろうとして足を滑らせました。その拍子に幸之助さんに抱きついたので、二人はそのまま、まっさかさまに海に落ちてしまいました。びっくりした幸之助さんは、もがきにもがいてようやく水面に顔を出しましたが、船はすでに遠くへ行ってしまいました。このまま沈んでしまうのか、と不安が頭をよぎった。が、ともかく夢中でバタバタやっているうちに、事故に気づいた船が戻ってきてようやく引き上げてくれたのでした。今が夏でよかった。冬だったら助からなかったろうと、幸之助さんは自分の運の強さを感じたそうです。

普通であれば「いやー、ひどい目に遭った。なんてついてないんだ」で終わってしまいそうな話ですが、さすがは経営の神様、松下幸之助さんですね。「夏でよかったと逆に自分の運の良さを感じたというのですから。このように物事を捉えることが出来ればまさしく「禍転じて福となす」の生き方ができますね。